今までのあらすじ

コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。
コオは父の身分証が必要なわけをわずか3分ほどで話し終わったが
莉子の、破綻した論理展開、通じない会話に、コオは困惑する。
莉子は【自分の状況は普通じゃない】【身分証を渡すのに証書が必要】などという。

 世間知らずの、莉子は、銀行のシステムをほとんど知らないようだ。銀行の口座開設に必要なものすら、知らない。
 今も上っ面だけで、証書、などと言ってるに過ぎない
 
(舐めるなよ・・・!)
 私は・・・一人暮らしで、失敗を重ねながら学んできた。
 あんたに家族を破壊されるまで、フルタイムで仕事をし、新しい家族を持ってそれを守ってきた。
 友人を持ち、ネットを駆使し、思いつく全てで家族を支えてきた。
 父が倒れてからだって、過去の毒家族への想いを封印し、父を支える努力をしてきたんだ。
 
 コオ:「・・・いや。本人いないとダメだから、父も連れていくよ。 通帳作るのに銀行行っても、身分証明だけでもだめ。本人もいないとダメだからね。」
 
 莉子:「 じゃあさ、ちょっと約束してほしんだけど、お姉ちゃんが、必ず一緒に行くのね?」
 コオ:「(何偉そうに言ってんだ死ね!!)だって他に誰が行くのよ?」
 莉子:「 ちゃんとそれこそ、シンプルに言ってよ。行くのね?ちゃんとお姉ちゃんが?必ず一緒に行くのね?」
 コオ:「(だから偉そうに言うな!!)だから、行きますって何度も行ってる。私が連れて行くの。」
 
 コオは激しくイラついた。
 
 莉子:「その場に、和香子さん以外がいる可能性・・・」
 コオ:「 和香子さんはいない!!私と父だけ!通帳を作ったらその番号を和香子さんに知らせる、それだけ!!」
 莉子:「・・・それは銀行に行くっていう事?」
 
 これが、あの、莉子だろうか?
 
 コオと莉子は同じ高校だった。莉子が1年生。コオが受験を控えた3年生だった1年間。
 成績は限りなく最下位に近かったコオと違い、莉子は上から数えた方が早かった。
 『お前、これ見て言う事ないのか!!』 莉子の成績と並べてみせられ、そんなふうに職員室で怒られたこともあった。
 気は合わなかったけれど、話の仕方はいつもコオのやり方とは違っていたけれど…
 頭は良かったはずなのに・・・ 
 
 莉子は、今までの話を一体どれくらい理解してたのだろうか?