今までのあらすじ
コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。
コオは父の身分証が必要なわけをわずか3分ほどで話し終わったが
莉子の、破綻した論理展開、通じない会話に、コオは困惑する。

 
 「結局・・・いったい・・・何をしてほしいわけ?」
という問いに
 「どうして話を遮ったの!?私が一生懸命浅見さんに話をしてるのに!!」
という返答を返してきた莉子。コオには同じ言語で話しているとはもはや思えない状態だった。
 
コオはため息をついた。答えざるを得ないだろう。ここは。
 
 コオ:「浅見さんに話しても意味がないから。」
 
何故ケースワーカーの浅見に向かって話すのか、コオにはまったく理解できなかった。
オブザーバーは、立会人だ。話し合いに参加するわけではないのだ。
とはいえ、あまりにムチャな事を言う莉子を軌道修正してほしいとは思ったが。
 
 莉子: 「はー、もうだめだ。どうしたらいいんだろう…」
 
莉子は大きくため息をつきながら天井を仰いで独り言のように、言った。
 ため息つきたいのはこっちだよ、とコオは思った。
 大体何?その被害者面。被害者はこっちだよ。日本語理解しない奴と会話しなくちゃいけないとか、最悪。
 胸の中で毒づいていないと、頭がおかしくなりそうだ。
 いや、頭がおかしいのは莉子だ。
 何故、ケースワーカーの浅見はこれを放置しているのだろう?
 
莉子:「ちょっとお姉ちゃん!!色々文句張るんだろうけど、話だけ聞いてくれる!?」
コオ: 「は?それ、どれくらいかかる・・・?私、仕事が・・・」
 
 とたんにとがった声で莉子はコオの言葉にかぶせてきた
 
莉子: 「だから私は話をするために来たんでしょ!?意味ないでしょ、話ししないで帰るなら。」
 
 だったら、ケースワーカーにだらだらしゃべってんじゃないよ、バカ。
 意味がないのはお前の言葉だ。