今までのあらすじ
コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。
コオは父の身分証が必要なわけをわずか3分ほどで話し終わったが
莉子は、何故かケースワーカーに自分語りをはじめ、コオは平衡感覚を失う。

 
 このミーティングの間中繰り返された莉子の論理展開。
 いや、論理と言えない、彼女の話の進め方は、激しくコオを混乱させた。
 
 それは、コオが1年前、離婚のきっかけになった莉子とのやり取りの時と全く同じ、
 コオのやったことに対し、入り口も出口も否定し、ふさいでいくようなやり方だ。
 
 莉子:「あれだけ実家を拒否しておいて、なんで老人ホーム事なんて今更、やるの!?」
 コオ:「父に頼まれたから。頼まれなかったらわざわざやらないよ。」
 莉子:「私なら、ここまで拒否してたらやらないよ!」
 コオ:「じゃあ、父に言えばいいじゃないの、自分がやるからお姉ちゃんに頼まないでって。」
 莉子:「ほら、そうやって、放り出す。やるなら最後までやってよ!!」
 
 そんなふうに。
 やることを責めながら、じゃあ、やらないといえば、放り出した、と言って責める。
 莉子の話の展開の仕方は全て同じだった。
 
 そしてさらに、コオが、事務的だ、とあらゆる場面で責めた。
 莉子: 「いつもお姉ちゃんはそう!!事務的にそうやって・・・人間じゃない!!」
 コオ: 「事務的に進めたいの。この件は、だって、事務だから。」
 莉子: 「お姉ちゃんに頼みたいって、パパの気持ちは私はわかるよ。だから私だって、パパの気持ちを尊重してそうしたければ、って思ってたけど、お姉ちゃんが娘としてやるんじゃないんだったら、私が、すっごい大変だけど私がやる。すっごい大変だけど、絶対・・・私はお姉ちゃんとちがうから・・・大変だけど・・・」
 そして涙声になる。茶番だ。意味もない。
 コオ: 「じゃあ、あとはそっちでやって。私は父に頼まれたことを全部こなした。あとは、ともかく身分証がないと次には進めない。なんで渡せないって叫ぶのか理解でいないし、渡してくれないなら、私はこれ以上進められないから。」
 莉子: 「ほら!またそうやって、いつも自分はやった、ここまでやったって被害者みたいな顔して!!」
 
どうしろっていうんだ???????
 コオは人生の中でここまでうんざりしたことがあっただろうか、
 と考えながら、ボールペンをノックし、またパチンと戻す、という行為を繰り返していた。
 うるさいのはわかっていたがやめられなかった。
 
くだらなすぎる。莉子は変だ!!