今までのあらすじ
コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。


  莉子がしゃべりはじめてから15分後。
 コオはすでに平衡感覚を失いつつあった。

  (なんだ、これは。)

 単純な話だったはずだった。
 父が親戚に貸したお金を返してもらう。月々決まった額を振り込んでもらう。そのための振込口座を作る。そのために父の身分証明が必要。それを渡してほしい。
 that's it.

 莉子が嫌に攻撃的に(しかも偉そうに)

「お姉ちゃんの口から説明して。」

 といったが、3分もかからず、コオは説明を終えた。間に莉子の余計な横やりを入れてくるのを、コオは「今はそれ関係ないから。」とぶった斬り、話しきった。なのに・・・

それが、なんなんだ??今のこの状況??

「・・・ともかく、私のことを理解していただくって言うのは、とても大変なんですけど、それで父も、本当にもう昔のように物事を整理してできなくなってるんですね、それで、今回、老人ホームに移るのに、前金を用意するのに、親戚に貸したしたお金の事を思い出したんだと思うんですよ....」

 何故莉子がケースワーカー相手に自分のことを語り出してるんだ?しかも例によってまったく何がいいたいのかわからない。話の着地点も見えない。そもそも、オブザーバーに何故語る必要がある?
 
 世界がグニャグニャとゆがんでいくような感覚だった。


 莉子は、変だ。