今までのあらすじ
コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。

莉子:
「私から話すね?パパからも何となくは聞いてるけど、パパ経由で大事な書類を渡すって言うのはできない、っていうのは、パパにはっきり言っていたの。
 ちゃんとどう言うことか話を聞いてからでないといつ戻ってくるのか、とか、ちゃんとした形で戻してもらえるようにしないと、こういう大事な書類ってなにかあったら必要になるし・・・、いろんなところで前みたいに整理できる人でないから、それでもうね、ずっといってたんだけど、ただ預けていくってことはできないって・・・」

 ああ、もう。
 なんだこのわかりにくく、回りくどく、余計なことだらけのことばは!
 しかも途中からコオではなくオブザーバーの浅見に向かって話し始めて、まだ続けてる。
 
 コオならこの内容を5秒以下で言える。

【父経由だとよくわからないから、この書類が必要だって言う理由を直接教えて?】

 (こいつは…信じられないくらい長くかかるかもしれないな)

 だらだら無意味に続く莉子の言葉を聞きながら、コオは窓の外をみていた。