今までのあらすじ
コオはついにケースワーカー立ち合いの元、妹・莉子と、北寿老健で会うことになった。
莉子が来る少し前にボイスレコーダーの録音スイッチを入れた。

 
 莉子は老けたな、とコオは思った。口元がたるんでいる。人のことは言えないが。
白い薄手のワンピースを着た莉子は、相変わらず、丘の上で花束を抱えた夢見る少女を気取っているようで、ちょっとイタイ。そんなことをコオはは考えた。
 
 コオは、いつも手元においている手帳を取り出し、メモができるようにテ-ブルに広げた。
 
「あの、浅見さん、ほんとごめんなさい、書くもの持ってきてなくて、ホント、ごめんなさい~」
 
莉子はケラケラと笑いながら、浅見に鉛筆とメモ用紙を借りている。
 
(こういうところが嫌いなんだよ)
 
コオは既にイライラしていた。
他人には調子良くあたるから、みんな気づかないよく考えてみて欲しい。
 無音声の映画の1シーンだとしたら。

 テーブルについた後、ノートとボールペンを広げるコオ。一方、笑顔で浅見から紙と鉛筆を受け取る莉子

 真剣なのはどっちだ?