今までのあらすじ

 コオは約束の30分前に北寿老健についた。
 妹・莉子に会う前に父と、立ち会ってくれるケースワーカーとも会っておきたかった。
 父は、いつもの丸首のスウェットではなく、カラーのついたシャツを着ていた。
 
 「ああ、俺も、行くからな。」
 「いや、パパは・・・」いない方がいい。という言葉をコオは飲み込んだ。

 「きてほしい感じだったら、浅見さんに読んでもらうけど、最初は、いない方がいいかも。興奮すると、脳によくないし。」

 コオは言った。
 父は素直に、そうか、といった。

 「浅見さん、今日は、よろしくお願いします。」
 「あのぉ・・・私、そばで聞いてるだけでいいんですよね?」

 ケースワーカー浅見は言った。コオはうなづいた。

 「ええ、浅見さんがいてくだされば、妹もむやみにヒステリー起こしたりすることはないと思うんで。」

 時計は、すでに約束の時間を指していた。