Day380-ここまでのあらすじ

 コオは、次の月の末までに、莉子が施設を見学し、意思をはっきりさせるとこ。さもなければ、老人ホーム探しから手を引くことを父に宣言.

 その意思表明は一定の効果はあったものの、結局莉子は、期限ぎりぎりに設定した見学日をドタキャンした。

父は、莉子は期限内に、「ノー」という結論を出したのだから、コオに次を考えてほしいという。

コオは、新たに条件を設定し老人ホームを探したい、と高齢者住宅紹介業者の藤堂を頼る。

藤堂は3つの施設を選び出し、見学をすることになり最後の施設をコオは気に入ったが、前回とおなじことが怒るのを恐れ、

コオは何もしないことにした。そんなときに、父に頼まれ、お金を貸していた親戚に会うことになる

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 和香子さんと会うことになったのは平日だった。

 離婚したことを言っていないことと、彼女が出張中の滞在先に近いということで和香子さんが指定したのは、

 前・夫 遼吾と、次男・健弥のいるマンションにほど近い駅だった。

 

 「久しぶりね。コオちゃん。」

 

 和香子さんは笑った。最後に会ったのは大学に入学して間もない頃だったから、和香子さんはしわも増え、おばあちゃんになっていた。でも孫も生まれたそうだから当然だろう。それでも、元気な明るい話し方は前とおなじだった。

 駅の中にある和食のレストランに入り、和香子さんは、最初に自分の3人の子供たちの近況を語った。コオが知っているのは3人目の娘までだったが、その後、4人目の男の子も授かり、全員今は独立していること、3人目の娘は結婚して海外にいること、自分は出張中は次男の所に滞在していることなどを語った。ただ、コオが学生時代にお世話になった叔父、和香子さんの夫は闘病の末何年も前に亡くなっていた。

 

 「お父さん、どう?」

 「ええ、脳出血2回も起こして、麻痺も認知症もないなんて奇跡的です。自分でちゃんと動けてるので、今のうちに安心して滞在できる施設に移れたら、と。」

 「おうちに帰りたいって言わないの?」

 「本心はわかりません。ただ、妹が、もう自分の世話は無理だから、と。今いる施設は・・・期限付きの施設でずっと居られませんけれど・・・まぁ、ご飯は決まった時間に出てくるし、基本的な面倒を見てくれるので気に入ってるみたいです。こういうところなら、もう、家に帰らずにずっといてもいいかもしれないって、それで、永住型の老人ホームを探してくれっていわれたんです。」

 

 割とすんなり、老人ホームの話にすすめたので、コオはほっとした。