Day 279までのあらすじのまとめリンク
Day280-ここまでのあらすじ
コオはメンタルとともに体調を崩し、さらに激しい物忘れに悩まされつつ、年を越した。そして、父が倒れて1年がたった頃、再び高齢者住宅の紹介業者・藤堂から、”施設に空きが出る”という連絡をうける。空くのは確定であり、コオはすぐに動き出す。
まずコオは現在の老人保健施設に『すぐにキーパーソンである妹と話し合いを持ってほしい』と連絡をする。
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何度も繰り返すようだが、コオの記憶はこの時期はひどく断片的になっている。
頼りの記録は携帯に残されたメッセージやe-mailのみ。
この長い8050戦争の中で、ささやかな穏やかな時期と、嵐のように降りかかる困難に対処し続けなければならない時期が、まるで波のように繰り返されていくが、この時期はその中で、かなり悪い一時期であったといえる。
前向きに事が進むときは、たとえそれが嵐の様であっても、コオはその荒波を正確に記録し、対処しようとしていた。
前向きに事が進むときは、たとえそれが嵐の様であっても、コオはその荒波を正確に記録し、対処しようとしていた。
離婚して一人暮らしになってからも、父の施設探しを進めているうちはまだ良かったのだ。
莉子が絡み始めたとたんに、すべての事は進まなくなる。そこはコオがコントロール不能な部分だからだ。
父の介護認定、通帳手続き。年金額のチェック。そして施設の決定。
これらは、莉子がキーパーソンである限り、莉子を絡めないわけにはいかない。そのストレスに加え、毎週面会に行く父の言葉。莉子だけを案じ、コオを”便利屋”と言ってのける、父の言葉の数々はボディブローのようにコオの精神を削った。
それでも、この時、コオは心を躍らせていた。
”父をあの施設に入れる。
父は、気持ちよくあの施設で過ごせるだろう。
そして、その時こそ、きっと遼吾は迎えに来てくれる。私は、子供たちと夫のいるあの家に戻れる。
そして、1年前までのように、幸せな日々を取り戻せる。”
そんな風に。
そんな風に。

