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あらすじ BattleDay0-Day86

 

*******Day86以降・前回までの話*********
 
コオは、父の退院後ケアマネージャー立石と連絡を取あうようになる。

父が退院後すぐ自宅に戻ることはなく、老人保健施設に短期入所していたこと、莉子が父の自宅介護で必要なことを自分で決定できず、立石が困っていることを知る。莉子をキーパーソンとする、という大前提を先に明確にしたうえで、コオが影で動く立石との連携は機能し始める。

 ゴールデンウイークにコオ達家族は1泊の短い家族旅行を楽しんだのだが、自分たち家族だけが楽しんだことにコオは罪悪感を覚える。

旅行から帰った次の日、莉子にケアプログラムを提案するために出かけるが、莉子は外で父と話したい、といったコオを拒否、家から追い出そうとする。コオは、何とか父と言葉を交わしはしたが、母の言葉でコオを責め立てる莉子と、それを止めない父に疲弊して実家を後にした。遼吾に状況を話し、助けを求めたが、コオを突き放す遼吾の言葉に、絶望する。

過去の瘴気に毒され、感情に溺れ切ったコオを理解できず、コオを放置することを選んだ遼吾。

コオは絶望を抱えたままそれでも、日常を送ろうとする。

そのなかで、コオは莉子の統合失調症を疑いつつ、莉子が決められなかった主治医を決めようと考える

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 この「主治医を決めなくてはいけない」という、自宅介護のシステムは実はあまりコオはよくわかっていなかった。けれど、確かに主治医は決まっていた方がいいだろう。ここは深く追求の必要はない。

 莉子は父が最初に救急搬送された大学病院を希望しているが、普通大学病院は紹介状でもない限り、こういういわゆる【普通】の患者は受けないのは常識だ。コオは2回入院しているが、両方とも紹介状があったし、特定疾患とよばれるものだったり、手術が必要になるものだったからだ。【普通】で見てもらおうとするとバカ高い初診料をとられるうえに、結局外部の病院に回されるのが関の山だ。

 

 探すべきは脳出血で入院し、未だに尿道カテーテルが取れていない父の状況から考えて

 1.尿道カテーテルの交換を定期で可能な病院。泌尿器科か内科。

 2.脳血管外科

 3.内科

の3つだろう、と判断した。泌尿器科もいれると3つ回るのはどう考えても大変だ。できればおおきめの総合病院で泌尿器科と脳血管外科と内科全部あれば、それがいい。だめなら、内科はカテーテル交換もしてくれるところを探そう。

 なんといっても今莉子は車を持っていないはずだから、なるべく実家から行きやすいところがいいだろう。

 

 こんなの簡単だ。多少の時間は必要だが、コオは1時間程度で選び終えると、ケアマネージャーの立石にFAXを入れ、あとから確認の電話をした。立石は、自分も賛成だということ、そしてこれを莉子に立石からの提案、ということで話をする、と約束してくれた。

 

 正確な日時は覚えていないが、この頃、コオは、莉子の友人、太田笛子にメールを出している。太田笛子は莉子の友人だった。コオが莉子の友人で名前以外の情報を知っているのは彼女だけだ。職業上彼女はホームページを開いていて、メールアドレスも載せていた。体験申し込み用のホームページには、彼女の経歴がのっており、ほぼ間違いないはなかった。ただ、フルネームがなかったので、コオはまず万が一別人である可能性を考えて次のようなメールを書き、また、同時に電話番号にショートメッセージもいれた。

 

 《 間違っていたらごめんなさい、深谷莉子の御友人の太田笛子さんではないでしょうか。私は莉子の姉です。伺いたいことがあってこのメッセージを送らせていただきました。もしまちがえなければご返信いただけますでしょうか?》

 

 コオは聞きたかった。莉子はやはり友人にはコオがいらいらするほどの気を使った話し方をしているのだろうか。それとも、やはり、病気で・・・それなら、友人の彼女なら、気づかないわけがない。

自信がなかったのだ。莉子が、精神的に病んでいる、というのは確信に近いものがあったが、それでもなお、あの異常な行動と対応は姉のコオに対してだけではないかと思っていたから。