************これまでの話********************************

父が脳出血で救急搬送された。2日後、意識を取り戻しERから別病院に転院し、実家と連絡を絶っていた娘のコオは仕事帰りの面会で父との短いが穏やかな時間を送る。
一方父と同居のコオの妹、莉子はコオと、会話が食い違い険悪な状況が続く。1ヶ月が過ぎようかというとき、莉子は姉・コオの夫、遼吾に繰り返し電話をし、会って父の今後を話したい、という。

 莉子会うまでの間に、コオは全く知らない”介護システム”について、高校時代の友人・響子に教えてもらい、役所と連絡を取りはじめる。

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「パパ?」

「うん?」

父は、回復はしていたが、調子が悪いと熱を出した。熱を出すと、途端にしゃべることがはっきりしなくなり、会話が通じない気がする。そういう日は、あまり、たくさん質問したりしないように、少し短めにコオは面会を切り上げることにしていた。この日は少し、具合が良くないようだったが、コオは起きなくていいから、といって、耳に顔を近づけて、大きな声で聞いた。

 

 「退院したらさ・・・お母さんのときみたいに、リハビリとかのプログラム作ってくれる、ケアマネージャーが必要なんだって。それで、パパは,

男の人のほうがいい?それとも、お母さんのときと同じ人がいい?」

 「うーん、そうだなぁ、まぁお母さんのときと同じ人なら、まぁ、またお願いしますよ、ってことになるなぁ、慣れてるから・・・」

 「そう。じゃあ、その人のほうが良ければ、頼んでみるけど。それでいい?」

 「まぁ、その場合は、どうも、久しぶり、ってなるよなぁ・・・」

 

特に、こだわりがないようだ、と判断して、父のケアマネージャーは基本母の時に頼んでいた人に頼もうと思った。・・・もちろん、担当人数に空きがあれば、だが。

 そこでふと、連絡先も、名前も知らない事に気づいた。

 

「パパ。お母さんのときのケアマネージャーさんの名前わかる?」

 

 こんな最近の記憶は、厳しいかも、と思いながら聞いた見たが、果たして父は思い出すことはできなかった。

 仕方ない。莉子が知っているはずだから、この仕事は莉子に振ろう。

 

 これで、ほぼ、莉子に話さなければいけないことの準備は整った。

 意外にに手際よく進められている自分に、コオは少し驚くとともに、大幅に手間を省けたのは友人・響子のおかげだ、と心のなかであらためて感謝した