************これまでの話********************************
父が脳出血で救急搬送された。2日後、意識を取り戻しERから別病院に転院し、実家と連絡を絶っていた娘のコオは仕事帰りの面会で父との短いが穏やかな時間を送る。
一方父と同居のコオの妹、莉子はコオと、会話が食い違い険悪な状況が続く。入院費の請求を病院側から知らされたのをきっかけに莉子は姉・コオの代わりに遼吾に繰り返し電話をし、会って父の今後を話したい、という。
莉子会うまでの間に、コオは全く知らない”介護システム”について、高校時代の友人・響子に教えてもらうことにした。ランチをともにしながら、響子は丁寧に説明をしてくれる。
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「そっか、じゃあ、私が知らなかっただけで、母も多分、ケアマネージャーがいたはずだよね。」
「絶対いたはずだよ。麻痺があったんだよね?しかも退院した後は、ずっと自宅だったんでしょ?」
気がつくと、ランチを食べながらもう2時間近くが経過していた。コーヒーを飲みながら、響子は積み上げていたファイルをとんとん、とまとめた
「在宅介護になる予定なので、ケアマネージャーについて相談したいんです、って電話するといいよ。役所に。介護保険課、とか高齢介護課、とかそんな名前だったと思うけど、まぁ、大丈夫だよ。どこに電話しても回してもらえるから。」
「わかった・・・ありがとう、響子。めちゃくちゃわかりやすかった。今日のランチはもちろんおごる。ほんとにありがとう。」
「じゃ、今日は甘えることにするわ。現役介護の先輩だから、私。いつでも聞いて。」
響子はにっこり笑った。
これから施設に行く、という響子と途中で別れて、コオはしみじみと思った。
素晴らしい。
打てば響くというか、この会話のテンポ。こちらの知りたいことをわかりやすく教えてくれて、お互い(とコオは思っている)会話に無駄がない。通じ合っている感覚。彼女といると心地が良い。何時間話していても、楽しくて、時間がすぎるのが惜しいくらい。これは高校時代から変わらない。いや、むしろ歳を重ねてからのほうが、うまく会話できているような気がする、とコオは思う。
(高校の時の友達となら、いっつもこんな感じで楽しいのに。・・・莉子とはどうしてこういかないんだろ。おんなじ高校出身なのにな。)
莉子と会う日のことを考え、コオは小さくため息をついた。
