************これまでの話********************************
父が脳出血で救急搬送された。2日後、意識を取り戻しERから別病院に転院し、実家と連絡を絶っていた娘のコオは仕事帰りの面会で父との短いが穏やかな時間を送る。
一方父と同居のコオの妹、莉子はコオと、会話が食い違い険悪な状況が続く。入院費の請求を病院側から知らされたのをきっかけに莉子は姉・コオの代わりに遼吾に繰り返し電話をし、父の今後を話したい、という。場所についての奇妙に神経質な指定にコオは違和感を覚える。
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「結局…あの子の思い通りにしなくちゃいけないわけ?なんでいつもそうなの?」
コオは荒れたが、それよりも、むしろ困惑してた。莉子は・・・昔より、更になにを・言っているのかわからない。
「変なのわかってる。しかもたったこれだけの話するのに、俺30分もかかったんだぜ。」
「・・・選択肢なんて結局無いじゃない。家でヒステリー起こす莉子に会うくらいなら、公園のほうがマシ。」
冬だっていうのにバカみたい、とコオは腹立たしげに付け加えた。
・・・これが予想の斜め上を行く莉子の反応に、コオも、遼吾も、不吉な気配を感じた最初の出来事だった。
さて、コオは、途方に暮れた。
公園で莉子に会うまではまだしばらく・・・1週間はある。病院からは、”退院してからのケアマネジャー”をきめないと、と言われた。ケアマネジャーってなんだろう?どうやって決めるんだろう?介護保険・・・ってなんだろう?
このときはコオは、介護、という言葉を知っているだけで、それ以外何も知らなかった。名前は聞いたことがあるけど・・・さっぱりだ。システムもわからなければ言葉もわからない。
コオはWeb検索をかけてみたが、役所のホームページはわかりにくく、、もともと苦手な役所用語が多いのもあって、全く頭に入ってこない。コオはダラダラ検索するのをやめて考えた。
一番いいのは、おそらく介護に関わった人に直接聞くことだ。・・・そうだ、響子。彼女は同居はしてないけれど、近所に住んでいるご両親の通い介護の経験がある。その実家には、彼女の年の離れた兄もいて・・・かなりうちと近い状況だ。彼女に聞けば、きっとわかりやすく教えてもらえる。地区で色々制度が違ってたりしても、響子の住む家はうちと近いから、多分共通のはず。久しぶりに会えるのなら、せっかくだから、一緒にランチでも食べられれば、楽しいだろう。
コオは、高校時代の友人、邑木響子にメールを送ることにした。
《久しぶり!ちょっと教えてほしいことがあるのだけど・・・ランチおごります!ご予定いかが?》