**これまでの話**

父が脳出血で深夜から明け方にかけ、救急搬送された。

妹・莉子とともに一度は病院に向かったが、父は意識がなく、入院手続きなどの説明だけ受けた二人は病院からそれぞれの自宅に帰宅した。息子を学校に送ったのち、休んでいたコオに、莉子がやるといった入院手続きを、かわりにやってくれという電話が入ったがコオはそれを受ける。途中で入院に必要なものの買い物を済ませ、コオは病院にい向かった。

 

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 病院で入院手続きを済ませた。コオは、今までにこの病院に2度入院しているから、大きな総合病院ではあるが、何がどこにあるか場所も大体わかっているし、迷うことはない。20歳を過ぎたころから、平均して4年に1度はどこかの病院に入院しているが、そのうちの2回がこの病院だ。長男の遼太が1歳の時、そして5年前は手術を受けた。

 外来には、友人が看護士として勤めている。多分何回かは会うことになるだろう。とはいえ、自分が最後に入院したのは、もう5年以上前だったから、色々新しくなっているな、とコオは思った。明け方に行った救急病棟も、前はなかった。それでも、ある程度知っている、というのはいろいろな意味でいいことだ、効率的に動ける。(特に、こんなに大きな総合病院の場合は)とコオは思った。売店の場所も本屋の場所も、ATMの場所も、全部わかる。

 光が沢山差し込んでくる、待合室は、病院ではあるけれど明るくて清潔感がある。遼太の高校と同じように、コオはこの病院が気に入っていた。
 

 父の入院は、入院と言っても、まだ救急(ER)で、病室ではない。

 様態がいつ変化しても目が届くように、広い廊下のようなところに、医師や看護師のいるガラス張りの部屋に向かい合って、ずらりとベッドがならんでいる。ベットのベッドの間に壁もないが、そもそもそこにいる病人は大半意識がないから関係ないのだろう。心電図、酸素、点滴、様々な機器が接続され、命をつないでいる。コオは、少し戸惑いながら父のベッドの横にパイプ椅子を出して、自分の荷物をおいた。