**これまでの話**
コオは、父が脳出血で深夜から明け方にかけ、救急搬送された、と妹・莉子から連絡を受けた。莉子とともに一度は病院に向かったが、父は意識がなく、入院手続きなどの説明だけ受けた二人は病院から帰宅した。コオは息子を学校に送ったのち、休んでいたコオに、莉子から入院手続きをやってくれという電話が入った。
2時間後、莉子がやってきた莉子は、コオに入院に必要なリストをわたした。
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病院に行く途中に莉子から渡されたリストに乗っていたものの購入を手早く済ませた。
(バカみたい。こんなものドラッグストアとか、100円ショップでいくらでも買えるのに。昔っから全然あの子変わんないな。)
コオは正直、日々の日用品に関しては、同じものをより安く、しかも時間をかけずに買うための調査と努力は、ある程度は当然だと思っている。
何をどこでいつ買うのが一番効率的に、しかもお金がかからないかのデータベース的なものはほぼ頭に入っているので、必要なものを買うときは頭の中のそのデータベースを引っ張り出すだけでいい。
新しい店があれば入って脳内データベースを更新する。1日にサービス残業含めると10時間以上働くコオには時間の無駄にならないようするのも大事だから、セール品のチラシチェックはめったにしない。<おおよそ、底値>で十分だ。
その反面、コオは主にアレルギー持ちの次男・健弥のために、そして家族のために、食材はできるだけ体にいいものを惜しまずに買う。当然なるべく安いときにまとめて買うくらいの主婦的なことはもちろんやっている。仕事帰りに夜閉店の近いスーパーによって、安くなった肉魚や、刺身類を買って帰るのは習慣だ。
<体にいいものを、できるだけ安く> がコオの食材購入の基本方針だ。
一方、莉子は、日用品だろうが食材だろうが、決まった店で買う。それ以外のところで買うことはめったにしない。
デパートは大手のIデパート、
スーパーは近所の鈴屋か生協。
一見コオの購入先と同じようにも見える。しかし、違うのは、コオはデータベースに従って購入する店が決まるが、莉子は、店が先に決まってるというところだ。
コオのデータベースは更新されるが、莉子は店が先に決まっているので、その店がなくならない限りは基本的に変わることはない。普段買わないものだと「それって、鈴屋か生協に売ってる?Iデパートには?」という問いかけになる。
食材ならスーパーに売ってるだろうが、そうでなければ…コオの場合は耐久性のいらない日用品だったら100円ショップ、もう少しちゃんとしたものが必要なら…カテゴリー別に店と価格のデータベース。気持ちも豊かになり、しかも安く、望むのものを手に入れるためのデータ。それらに脳内アクセスする。
(最初からデータがあったわけじゃないけどね)
コオは自嘲する。無駄に時間をかけてチラシをチェックしていたこともあるし、遠くまででかけて1円でも安い底値のものを買おうとしていたこともある。基本的に要領がすごく悪い、という自覚はある。
ムダも随分したと思う。幸いだったのは、若い頃から洋服・化粧・バッグなどにほぼ興味がゼロだったことだろう。ブランド物などに無駄を費やすことなく、コオがつぎ込んだのはパソコンだったり、電子機器だったりだった。おかげで、それらは仕事の糧にになっている。
最終的にコオがたどり着いた買い物スタイルは、今の所ちゃんと機能しているように思う。
ともかく、莉子の印のついた入院グッズは、一瞥しただけで、病院に行く途中の2件の店で安く手に入る、とコオにはわかったし、事実そのとおりだった。
