**これまでの話***  

 

コオは、父が脳出血で深夜から明け方にかけ、救急搬送された、と妹・莉子から連絡を受けた。莉子とともに一度は病院に向かったが、父は意識がなく、入院手続きなどの説明だけ受けた二人は病院から帰宅した。コオは息子を学校に送ったのち、まずは体を休めようと自宅で横になっていた。

 

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電話がなったのは1時間も立たないうちだった。


「…はい、嶋崎。」
「お姉ちゃん、私。やっぱり、パパの入院手続きやって。」


莉子の声に、コオはイラッとするのを止められずにいた。蓋。感情には蓋を。


「…いつ。今遼太の学校まで行って帰ってきたところなんだけど。」
「色々準備したんだけど、細かいものが足りないから、買ってもらわないといけない。でも私レッスンあるから…やっぱり入院手続き、行って。」


 レッスン?


 よくわからない。なんでこんなときに、と思わないではないけど、キャンセルできない理由でもあるんだろうか?。


「…で?すぐって訳に行かないよ」


本当はそんなこと無いのだが、待ってましたと受けるには、ちょっと抵抗がある。そもそも、入院手続きは、最初にコオがやるよと言ったのに、自分がやると断ったのは莉子の方だ。また病院に行くと、コオは長男の高校を往復、今回3往復目になるのだ。最初から分かってればそのまままっすぐ遼太を送った帰りに病院に寄れたのに。


「…用意したもの、お姉ちゃんのところまで持ってく。リストも。」


莉子はそう言って電話を切った。

 

 しかし莉子が来たのはそれから2時間ほどもたったあとだった。