イップスは、静止状態から動き出す際に発現しやすいと言う話を前回のブログで書かせて頂きました。
ゴルフや野球の投手、アーチェリー、射撃、ビリヤードなどです。
テニスで言うとサーブがそれに当たり、トスが不安定になりサーブが乱れる。
しかし、ゴルフの例でも紹介した通り、イップスには様々なパターンがありました。
フォアハンドのイップス、
生徒さんがフォアハンドのイップスで悩んでいたケースと、自分自身に起こった同じくフォアハンドのケースの話をしたい。
前回、ラケットスポーツでは卓球に検証例があり、サーブ、リターン、フォアハンドにイップスが確認された、と言う話をしました。
確かに、サーブとリターンは静から動に転じる動作からイップスが起こりやすいと言えるのですが、
なぜフォアハンドにイップスがあるのか、
バックやサーブ、ボレーにはないのか。
今回も、前回紹介したこちらの本、
大修館書店の「イップス………スポーツ選手を悩ます謎の症状に挑む」
を参考にさせて頂きました。
まず、スポーツ選手の習得するスキルは全てが日常動作の組み合わせだと言うことです。
つまり、歩くときに
「右足を前に出したら、次は左手足を前人気出さなくちゃ」
と考えることはなく、
じゃんけんでチョキを出す時に、
「薬指と小指を内側にたたんで、人差し指と中指をたてて、」
とは考えずに、自動的にやっている筈です。
押す、引く、捻るなどの日常の動作には思考がなく自動的に行われる動作であり、
スポーツのスキル、技術とはこの思考が働かない日常動作の組み合わせであり、最初は頭で思考しながら練習を行うのですが、
反復練習をたくさんすることにより、自動的に出来るようになる。
フォアハンドもバックハンドも、サーブもボレーも、この日常動作の組み合わせを反復練習により、習得していく訳です。
その日常動作の組み合わせの中で、日頃からやっている頻度が高い日常動作が多いスキルほど習得が早くなり、
日常動作の頻度が少ないスキルほど習得が遅くなる。
つまり、テニスで言えばフォアハンドが普通なら一番が早く習得が出来て、バックやサーブは遅くなる、と言えると思います。
それが何かのキッカケで、日常動作の組み合わせであるどこかの部分が機能しなくなり、
頭で考えながら、つまり自動的に出来なくなってしまい、マニュアル動作になった時にイップスが起こるとされています。
これはフォアにイップスが起こる分かりやすい説明だと思います。
つまり、フォアハンドはバックハンドに比べて、日頃何も考えずに打てるのに対して、
バックハンドは、日頃から良く考えながら、つまりたくさん思考を使う、
あそこに注意しなきゃ、これに気を付けなければと
要は苦手にしている人が多いため、イップスが起こりにくい、と言える。
さて、それではイップスを引き起こす「キッカケ」について話をしましょう。
以前に私がスクールで指導した生徒さんで、ボール出しのボールや、ラリーではフォアハンドのトップスピンが打てるのに、
ゲーム練習になったとたんに、全てのフォアハンドがスライスになってしまう。
「日頃、しっかりしたトップスピンが打てていますから、ゲームでもしっかりフォアハンドのトップスピン、打ちましょう!」
「分かってるんですけど、何も考えないでフォアを打つと自然にスライスになっちゃうんです」
「スライスなら、しっかり返せる自信があるんですけど、トップスピンで返すとなると不安で」
「分かってるですけどねぇ」
「トップスピンを打とうとすると、どうやったら良いか分からなくなってしまうんです」
これは、その当時は気付かなかったのですが明らかにイップスの症状です。
これは、一人だけでなく何人かこう言う生徒さんがいました。
この、いつも何も考えないでやっていた事が、突然どうやったらよいか、全く分からなくなる。
こんな事がよもや自分にも起こるとは、その時は夢にも思っていませんでした。
その衝撃の体験の話を次回まで、お待ちください。