今回のテーマは実に重たいテーマで、しかも結論が出ない話になりますが、恐らく一回では終わらず何回かに分けて書くことになるかもしれません。



少し前のウィンブルドン、錦織選手が2回戦で敗退したときのコメントに



「イップスにかかった」



と言う発言がありました。



「イップス」



今やこの言葉を知らない人はいないと思いますが、一体どのような症状なのかは分からない方は多いのではないでしょうか。



この言葉が使われるキッカケになったのは、ゴルフです。



ゴルフのパターを打つ時に利き腕が痙攣して動かなくなる、または勝手に動いて強く打ってしまう、などの症状の事を最初にイップスと呼んだそうです。



パターを失敗するした際に「ウップス」と呼んだのが、後に変化したと言う説も。



次にイップスが影響していると言われたのは、野球です。



ボールを投げる時に、離すタイミングがおかしくなり、暴投になったり、地面に叩きつけたりしてしまうシーンを良く見ました。



今やイップスは、様々なスポーツでかかってしまった症例が報告されています。



ゴルフ、野球、サッカー、ラグビー、アーチェリー、射撃、ビリヤード、卓球、バトミントン、



そして、テニス。



私は長年テニスコーチをしていて、この謎の症状を数多く見てきて、尚且つ自分でも経験したことがあり、一体何が起こっているのか解明したくしばらく研究していました。




今回のブログを書くにあたって参考にした本は、



「イップスの科学」



2001年、星和書店発行。






「イップス…………スポーツ選手を悩ます謎の症状に

挑む」


2017年、大修館書店。








まず、一般に想像されるのが



① メンタルの問題ではないか。



② 技術が未熟じゃないのか。



しかし、これらの本によると、メンタルが強靭で尚且つ、素晴らしい技術スキルを持っている人がかかりやすいらしいです。



確かに、メンタルが弱い人は全てのプレーがボロボロになってしまい、



技術が未熟な人は、上手く出来ないのが当たり前。



イップスの最大の特徴は、ある特定の状況になるとある特定の動作に発生してしまい、普段なら簡単に出来る事が出来なくなってしまう。



練習では、問題なく出来る。



練習すればするほど悪化する。



と言うのが特徴だそうです。



ゴルフで言うと、難しいロングパットは大丈夫でも、誰でも入れられそうなショートパット、



野球だと、全力投球は大丈夫でも、それほと距離が長くないケース、7、8割の力で投げれば大丈夫な状況でイップスか発現するそうです。



ゴルフでは、パターだけでなくドライバーでも、バンカーショットでもイップスが確認されていて、



イップスの種類は、いくつかあるようてす。



残念ながら、テニスでの研究はされていないようですが、同じラケットスポーツの卓球では研究された事があって、



サーブ、リターン、フォアハンドにイップスかあることが確認されたとのこと。



ゴルフでは、イップスのために引退を余儀なくされたプロが数多くいたとありましたが、



実はテニスでもイップスのために若くして引退に追い込まれた人がいます。



実はイップスはかかった人は、自分がイップスだった事を告白しないケースが多いため、イップスではないかと言う想像なのですが、



シャラポワの前にロシアの妖精と言われた、



「アンナ・クルニコワ」




彼女は非常に才能があり、早くからニック・ボロテリーテニスアカデミーで、才能を見いたせながらも結局一度も優勝することなく、引退してしまった。



以前に紹介した事がある、ニック・ボロテリーの自伝に彼女の事が書いてあり、



凄い才能の持ち主だったのに、優勝経験無しに若くして引退してしまったのは残念だと、ボロテリーの記述がありましたが、



この人の症状は突如として、サーブが入らなくなってしまうのです。



一度サーブが入らなくなるとダブルフォルトのオンパレードで、しかしおかしいのはサーブだけで、それ以外は素晴らしいショットを放ってエースを奪いまくる。



もし、メンタルが弱いのなら他のショットもボロボロな筈なのに、サーブ以外は全く問題がない。



よって、本人からは何のコメントはありませんでしたが、イップスの典型的な症状に見えて、イップスだったのではないかと言われていました。



実際、止まった動作から動き出すスポーツ、ゴルフを初めアーチェリー、射撃、ビリヤード、にはイップスの症例がたくさんあるそうです。




そして、テニスで言えば、クルニコワの例の通りサーブが静から動に転じるショット。



特に、トスにイップスの症状が出るのをずいぶん見てきました。



当てはまるのはテニススクールの上級者、そしてテニスコーチです。



練習では安定したトスを上げて、精度高くサーブが打てるのに、いざ試合となるとトスが急に乱れだし、何度もトスのやり直しをする。



セカンドサーブなどは、スピンがかかりすぎてボールがネットのテープに当たるとか、わずかにサービスラインをオーバーする、と言うのではなく、とんでもなくフォルトしてしまう。



見た目、メンタルに問題があるように見えるのですが、サーブ以外は普通にプレーできるので、



「それならサーブの強化練習を」



となるのですが、練習ではちゃんと出来るようだと、練習するのは逆効果になりかねないのは前述した通り。



これは「イップスの科学」に記述されていたのですが、その意味では私は逆効果になってしまうレッスンをやってきてしまった、と言う反省があります。



さて、過去に私が見てきた生徒さん、そして私が経験した事がある、フォアハンドのイップスについて話をしたいと思います。



次回までお待ち下さい。



(クルニコワは、その美貌からテニスよりもモデルとしての活動を優先していきました)