お気に入りのコーヒーカップに、ヒビが
入ってしまった。
洗い物をしていてうっかり手を滑らせて
使う予定のなかったマグカップを
大切なコーヒーカップにぶつけてしまった。
その時は気づかなかったのだけど、翌朝
コーヒーを飲んでる時に少しずつヒビ割れ
からコーヒーが漏れていて気づいた。
私のマヤ暦の紋章と名前入のカップだから
この世に同じものは2つとない。
私の不注意で壊してしまった。
｢あ〜あ……
｣と思ったけど
不思議とショックではなかった。
新しいコーヒーカップが欲しかったのに
ずっと｢数には困ってないから｣という
理由で、購入することに躊躇っていた。
使えるものを捨てる勇気がなくて。
同じ理由で部屋は物で溢れている。
初詣に行った神社に飾られていた、氷の
オブジェがどんどん溶け始めていた。
溶けるから、
大きなものを作れるというメリットもある。
溶けるから、
完成の瞬間が尊い。
栄枯盛衰 正邪必衰の断り
溶けるのを待たずに破壊されていた
鏡に映る自分を見ながら悲しい気持ちに
なるのと同じくらい、老いた自分になぜか
ホッとしている。
もう、いろいろ頑張らなくてもいい。
後は溶けて朽ちていくことを受け入れ
穏やかに安らかに、風呂敷を畳んで
行く準備をすればいいんだと思うと
何者かになりたくて
何事かを成したくて
頑張ってきた自分を、愛しく思う。
今の、
明らかに人生を見極めて諦めた日々も
尊いし
頑張り続けた日々も愛おしい。
まだ時間は残されているから
お気に入りのものだけを集め
どちらでもいいものは手放し
空間も
時間も
必要なものだけを残そう。
好奇心だけでチャレンジしてきたこと
は、もうやらない選択をしよう。
残りのエネルギー配分を間違わないように
一つ一つ大切に選択する。
ヒビ割れたコーヒーカップは、
潔く処分した。
私自身が、私の一番好きなものを選び
私を居心地よくしてあげよう。
他者の評価や期待に応えたくなると
私の｢一番｣が分からなくなるから
自分がしっかりと｢どうしたいか｣を
常に知っておきたい。
誰かにそうしてもらわなくても
私がそうしてあげられたらいい。
ヒビ割れたコーヒーカップを呼び水にして
中途半端なものを手放して
私の一番を
人生に呼び込もう。
大切にしていても思いがけないコトが
ある。それが｢ご縁｣だと思うから、
望みはあれど執着はしない。
一番ふさわしいものとだけ繋がり
続けるのだから。
