<婚約者・夕月カンナ>
永倉新八には、婚約者がいた。
婚約者の名前は、夕月カンナ。
永倉とは、中学頃からの付き合いで、
「カンナのいない人生なんて考えられない。」と、
永倉は言った。
大学を卒業後、
永倉は総合商社。
カンナは大手広告代理店に就職が決まっていた。
互いに就職して、しばらく離れて住むようになっても、
その気持ちは少しも変わらなかったらしい。
”
カンナ「スマホが壊れたけど、買い替えに行く時間もないから、
しばらくはこの会社のアドレスを使ってね。
それにしても時差も8時間とかだし、
即レスできなくてごめんね。
でも、新ちゃんからのメール、
毎朝凄く楽しみにしてるからさ、大好きだよ、新ちゃん。」
永倉「俺もだよ。
ここはネットもほとんど使えないから、SNSは駄目だけど、
衛星会社からもらってるから、メールは大丈夫。
夏休みは絶対に貰って帰るつもりだから待ってて。」
”
永倉は「早くカンナの声が聞きたい」と思っていた。
時差もあるし、互いに仕事でいっぱいいっぱいという事もあり、
永倉がメールを送るのは夕方仕事が終った後。
それをカンナが読むのは、
朝の仕事が始まる前というパターンになっていたらしい。
それでも二人の絆は変わらなかった。
そんなある日、
永倉は彼女からのメールを見た。
内容には
”
凄く忙しそうだね、新ちゃん。
でも大丈夫だよ。
あたしは平気。
”
と、書かれていた。
永倉は『あたしは平気』という部分が気になった。
彼は、
”
大丈夫。
忙しいけど、時間通りに仕事は終わるから、
これからも毎日ちゃんとメールは書けるよ。
それよりカンナこそ頑張りすぎてないか?
身体壊しちゃ、元も子もないぞ?
夏休みはちゃんと取れそうだから、『お土産』楽しみにしててね。
”
とメールを返した。
彼は、
アフリカでないと、とても手が出せない大きなダイヤの指輪を
彼女にプレゼントするつもりだった。
永倉「カンナのやつ、きっとビックリするぞ~。」
ところが、
それ以来、カンナからのメールの返信がぷっつり途絶えた。
永倉「今日も来てないか・・・どうしたんだろ、カンナ?」
しばらくは電話はせずに、
返事はなくてもメールだけ続いていたが、
2週間も経つとさすがに不安になり、
永倉は夜中の12時。
「日本だと朝の8時で、彼女は仕事前だろうから、
きっと電話に出てくれる」
と信じて、
永倉は、カンナに電話を掛けた。
???「・・・もしもし。」
しかし、電話に出たのは、男の声。
永倉はすぐに電話を切った。
永倉「お・・男が・・・・出た。
どういうことだ・・・!?
まさか・・・・カンナに限ってそんな・・・・!」
<悲劇は突然に・・・>
永倉は、
「身内に不幸があった」と嘘をついて、日本に帰国。
しかし彼を待っていたのは、”本当の不幸”だった。
永倉は、受付の人に
永倉「すみません。
営業部第二課の夕月カンナさんと約束をしている
永倉と申しますが、呼び出して頂けませんでしょうか?」
と言うと、受付の人から帰ってきた答えは
「も・・申し訳ございませんが・・・夕月は・・・
3日前に亡くなっておりまして・・・」
という答えが返ってきた。
カンナは、3日前に自室の風呂場で、
手首を切って倒れてるところを同僚によって発見されたらしい。
永倉はカンナの葬儀の会場に、カンナの父親と会った。
「娘は忙しくて、『休みが取れない』とは言ってたんだ。
『でもやりがいのある仕事だから頑張る』と・・・
まさか、あの子がここまで追い込まれてたなんて・・・」
と、彼女の父親は言っていた。
棺の仲のカンナは、やつれていたけど、
まるで眠ってるようだった。
永倉「カンナ・・・これ・・・前に言ってた『お土産』だよ。
俺、お前にプロポーズする為に、すげー奮発したんだぞ?
・・・・・・なぁ、お前の手・・・・
どうしてこんなに冷たいんだよ・・・・!?
どうして・・・・どうして・・・・」
<山南からのパワハラ&山南への復讐>
葬儀を終えて、永倉が会場から出ると
同僚A「カンナちゃんの・・・彼氏さん・・・ですよね?」
同僚B「あたしたち彼女の同僚なんですけど・・・」
と、カンナの同僚2人が、「どうしても話がある。」というので、
近くのカフェに入った。
しかし永倉がそこで聞いた話は、とんでもない事実だった。
永倉「え?カンナが殺された!?」
同僚B「ホントなんです!
カンナちゃん、ずっと陰湿なイジメに遭ってたんです!
彼女の上司、山南敬助部長に・・・」
永倉が彼女の同僚に聞いた話によると、
山南は、新人歓迎会でカンナに迫って断られたのを
根に持っていたらしく、
新人のカンナにメチャクチャなノルマを課して、
毎日みんなの前で凄まじい叱責を浴びせていたらしい。
彼女のスマホが壊れたのも、
彼女のスマホが防水でないのを知ってて、
わざと飲み物をかけ、水をかけて洗った。
しかも代わりに会社の携帯を渡し、
「帰る時には自分のデスクの中に置いて帰れよ。」
とまで言っていたらしい。
永倉は、
山南は恐らく、
カンナのメールのやりとりを覗き見るためにやっていたんだろうと
思った。
彼女の同僚の話では
「課長は、全員のデスクの合鍵を持っていた」らしい。
誰もいない早朝とかに一番に来て、
永倉からのメールを盗み見ていた。
彼がその事を知ったのは、
カンナのスマホの中身を見た時だった。
永倉「これは?」
同僚B「山南課長に壊された、カンナちゃんのスマホです。
彼女、忙しすぎて身動き取れなかったんで、
あたしが代わりに修理に出してあげたんです。
・・・あ、パスワードも預かってます。
あたしは空けてないから、そのままお渡しします。
彼女のお父さんに、永倉さんから返してくれませんか。」
と、言われ、永倉は修理された彼女のスマホを受け取った。
永倉は、お父さんにカンナのスマホを渡すべきか迷ったが、
彼女のスマホで、カンナの日記を見つけた。
しかし、その日記には
”
カンナ「営業の電車の中、
絶対に無理なスケジュールどうやって回ればいいの?
何度見ても新ちゃんからの返事がない。」
「今朝も新ちゃんからのメールは来なかった。
どうしたのかな?
私のメールの返事もないなんて・・・
何か他の人が出来ちゃったとか、まさかだよね?」
「昨日も眠れなかった。
皆の前で怒鳴り散らされて、全部やり直し。
夜の12時までかかって、終電で社員寮に生き地獄。
新ちゃんからのメールは、今日もなし。」
”
と、書かれていた。
永倉は、自分が毎日欠かさず返事を書いていたのに、
カンナは読んでなかったことから、
山南がわざわざ早く出社して、
カンナが読む前に永倉からのメールを消して、
彼女を孤立させ、精神的に追い込むためにやったんだとわかった。
永倉「このスマホをカンナのお父さんに渡し、事情を話せば、
お父さんも会社を訴えたかもしれない・・・・
でもそれでどうなる?
山南というクズが会社をクビになるだけだ。
そんなんじゃ俺の怒りは鎮まらない。
あの山南というサイテーの男にふさわしい、
『犯罪者の汚名』を着せて、
この世から消してやろうと思ったんだよ!」
たまたま永倉と山南は、新撰組隊士と同姓同名だったこともあり、
偶然にも新撰組祭りもあって、
これを上手く利用できないか、永倉は考えた。
山南を新撰組祭りに誘い出すのは大変だったらしく、
カンナのスマホから知った奴のメアドにもメルマガを装って、
その案内を送ったり、参加すると得点か商品が凄いとか、
色々煽っていたらしい。
山南が狙い通り現れた時は
永倉「復讐の神様が俺に味方してるってね・・・!」
と永倉は思っていた。
永倉「ただ一つ、不運があったことがあるとするなら、
金田一君。
君の従姉妹を誘拐しちまったことかな?
それがなければ、これは見事な完全犯罪だった!」
と、永倉は金田一に言った。
永倉「ま・・・奴を誘拐犯にすることは出来なかったけど、
俺の復讐は成功した。
それだけで、俺は満足さ・・・
さ・・・刑事さん、行きましょう。」
(金田一語り)
こうして、都内を舞台に電車で駆け回った
『金田一二三誘拐殺人事件』は、
京王井の頭線渋谷駅を終点に幕を下ろした。
ただ一つ、俺の中に引っかかる『何か』を残して・・・
<感想>
今回の話で、事件の動機が分かりましたね。
山南が永倉の彼女の上司で、
しかも新人歓迎会で迫って断られた腹いせに、
新人の彼女に無理難題なノルマに皆の前で怒鳴り散らすという、
完全な陰湿なイジメという名のパワハラ。
最悪な男だね。
話読んでる時、凄く心が痛かった。
せめて同僚の人達も、
パワハラを受けている彼女に、相談に乗ってあげたりとか、
慰めたりとか、してあげられなかったのかな・・・
そりゃ、永倉さんの怒りが鎮まるわけがない。
しかもこれが最終話じゃなくて、次が最終話なんですね。
最終話で刑務所にいる永倉に金田一か金田一&フミちゃんの2人が何か言いそう。
しかも来年には、
『イブニング』で大人版金田一が連載されるんですね。
金田一少年が、青年になるのか~。
皆どんな風になってるんだろうな。
多分、見た目はそんなに変わってはないと思うけど、
金田一と美雪の2人が大学生になってるか、
探偵事務所でも開いてるのかな?
なんか想像しただけでも楽しみ。
ということは、もうマガジンでは金田一が読めないのか・・・それは残念。
でも『金田一二三誘拐殺人事件』の最終話がどうなるか、楽しみだな~。
