私がかつて切除した癌は、肺腺癌と言われるタイプだ。旧来の抗癌剤は効果が出にくい。本当に早く見つかって切除でき、幸運だったと思う。
 この肺腺癌の薬による治療に関連する医学の進歩は著しい。いわゆる分子標的剤の登場だ。分子標的剤はこれまでの抗癌剤とは発想が違う。「細胞を癌化に導く遺伝子変異」をする動き"Driver Mutation"を阻害すれば良いというアイディアである。この"Driver Mutation"と分子標的剤の研究はまだ発展途上のにある。その現状についての数字を入手したのでここでもまとめておく。

・日本人の肺腺癌の80%が"Driver Mutation"
・その内訳は以下の通り
 EGFR遺伝子変異 50%
HER2遺伝子変異 3%
KRAS遺伝子変異 15%
MET遺伝子変異 4%
BRAF遺伝子変異 1%
ALK遺伝子変異 5%
Unknown 22%

【参考文献】http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/jlcs2011/201112/522729.html

 私の知る限りEFGR遺伝子変異とALK遺伝子変異は、それぞれ有効な分子標的剤(イレッサやALK阻害剤などと言われる)がほぼ実用状態のようだ。ただ、遺伝子変異があれば必ず効くと言い切れるわけでもないようだ。それでも、肺腺癌の半分程度の方々に希望を与える薬が開発されているのだ。
 もちろん「切る、焼く」が肺癌治療の基本であると思う。それでも、選択肢が増えるのはありがたい。他の遺伝子変異についても、早く分子標的剤が実用化されるとありがたい。
 さて、私の遺伝子変異はどのタイプであろうか。再発したら、その検査を最初に行いたいと思っている。分子標的剤が手札にあるかどうかで、その後のカードの切り方はかなり違う。