以前、ALK阻害剤について、ネットで調べたときには泰効率(癌細胞が小さくなる率)で評価されたものばかりであった。その効果は素晴らしいものであったが、泰効率と余命は比例しないという話も耳にする。当時は「余命・生存率に関するエビデンスがほしい」と思った記憶がある。
 そのエビデンスがこの2011年6月に発表されているのを発見した。2011年6月3日。第47回米国臨床腫瘍学会で、セカンドライン、サードラインの治療としてALK阻害剤(crizotinib)に関する臨床結果が発表されたのだ。要約すると以下の通りだ(もちろん、全員、進行非小細胞肺癌の患者を対象として、臨床実験を行っている)。

★ALK陽性患者にALK阻害剤投与
 全生存期間平均 不明(※)、1年生存率70%、2年生存率55%

★ALK陽性患者にALK阻害剤投与しない
 全生存期間平均 6ヶ月。1年生存率44%、2年生存率12%

★ALK陰性患者にALK阻害剤投与しない
 全生存期間平均 11ヶ月。1年生存率47%、2年生存率32%

※生きている人がいるので計算できないという意味と思う。

【参考文献】http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/gakkai/sp/asco2011/201106/520116.html

 この数字。WEBで検索して、分かりにくいレポートを少し根気よく読み解けば手に入れられる数値である。ただ、上記の要約を当事者に伝えることに躊躇がある。
 私のささやかな経験から言えば「1年生存率が45%から70%に上がって凄い」と捉えるのは治療側の人間だ。患者本人は「1年後、3割が亡くなる」という情報に目が行ってしまうと思う。
 お伝えするには、デリカシーが必要だ。対象となる方の状況・性格を把握して、顔色を見ながら言い方を加減すべき情報と思う。相手の顔が見えない中で一方的に発信してはいけないと思う。
 ALK阻害剤について、メッセージ交換をした方には、上記の理由により、数値を直接お伝えすることはしなかった。ただ、セカンドオピニオンを受けることをお勧めした。セカンドオピニオンが上手く伝えることを期待してのことだ。その方はどうされただろうか。結果報告の便りは、今のところない。。。

【2012年4月27日追記】
当記事、当初アメンバー限定記事として公開させていただいたが一般公開に変更します。
この数値を知りたいという方がときどきあります。
それから、記事公開から時間も経ち、私に公開を躊躇させていた要因が解消されたためです。
不自由をおかけした皆さまにお詫びを申し上げます。