自宅から徒歩数分のところに空がきれいに見えるコーヒー専門カフェがある。
これまで行ったことはなかった。


その近くには夫カンタロウとたまに行く別のカフェがあり、そこでランチをすることはある。1000円くらいでチキンカレーやガパオライス、タコライスなどがドリンク付きで食べることができる。嬉しいことにとても美味しい。



カンちゃんは、最近今さら気づいたのだけど、食後すぐにデザートを食べたり、コーヒーや紅茶を飲んだりしたいタイプのようだ。


なのでカフェランチを終えて店を出てすぐに、そのコーヒー専門カフェに行きたがることが多かった。



「たった今、ご飯食べたばかりですよねぇ?そんなに食べてすぐに別のカフェに行きたがる人なんていますか?えー

とこれまでは却下してきた。



だけどたまにはコーヒーを飲みに行くのも悪くないなと思い、自宅で簡易ランチを済ませてから2人で行ってきた。



「いらっしゃいませ」

「こんにちは」

声をかけてくれるカフェのお兄さんたち。


心オネエが発動した。

「ひゃだ、やぁん、かわいい、きゃわわ~ラブ


俺だけではなかったようで、カンちゃんに腕をつかまれて、

「ほらショウタ、お兄さんたち見て。全員超かわいい。マジイケる」

と興奮気味に囁いてきた。



きっと大学生なのだろう、3人のお兄さん店員が爽やかな笑顔でたくさんのお客のオーダーを的確にさばいていた。



わざとらしくないエプロン姿→◎


ノンケサラサラヘアー→◎


店員さん同士の軽快なやりとり→◎


ふんっと重そうな荷物を持ち運ぶ筋肉→◎


接客を楽しんでいる姿→◎



すべてが花丸だった。

カンタロウはわざわざレジのお兄さんと話がしたいがために、

「この店のオススメは何ですか?」

「このシングルとダブルの違いは何ですか?」

と後ろに並ぶ女子たちの圧に全く屈することなく、いろいろ聞いていた。



店内を見渡すと、女子グループか男女のアベック、家族連れがほとんどで我々のような中年ゲイアベックなんぞ皆無、だった。



素敵なお兄さんたちが淹れてくれたコーヒーはとても美味しかった。



家に帰って、カフェお兄さんたちの笑顔の余韻に浸っていた。かわいかったよな~ラブ



カンタロウが、

「ねえショウタ」

と切り出してきた。


どうせあのお兄さんたちと比べて、いかに俺がブスで老けてるとか、彼氏があんなお兄さんたちみたいだったらよかったのに…みたいに言うのだろう。


と思ったら違った。



「だけどさ、ずっと永く一緒にいるならやっぱりショウタがいいなと思った。お兄さんたちはすごく素敵だけど、自分が結婚した相手がショウタでよかった」



思いがけない言葉で何も言えなかった。

「またまたカンちゃんってば~照れ

「うん、俺も❗️」

みたいなことも口に出てこなかった。



嬉しい言葉のはずなのだけど、よく分からなくてずっと無言でうつむいて皿洗いをしていた。

だからカンタロウがどんな顔をしていたのかも見なかった。



いつものように仲良く過ごして夜ご飯を食べてカンタロウを駅まで見送った。


カンちゃんが電車に乗り込み、姿が見えなくなって、さっきの言葉はきっとすごく嬉しかったんだなと思えてきた。



ありがとうだけでもしっかり言えればよかったな。

せめてと思い、いつになく真剣に嬉しかった言葉のお礼のメールを心を込めて送った。



カンちゃんへの感謝の思いを呼び起こしてくれたのはあのお兄さんたちの笑顔だった。

だから近いうちにまたカンちゃんと一緒にコーヒーを飲みに行きたいな。