だけど川沿い緑地には土筆が伸びていた。
「わぁ、ショウタほら見て見て、土筆だ❗️春らしいね」
こういう時のカンタロウはまるで少年のようにはしゃいでとても嬉しそうに言うので、俺も春の訪れを素直に喜ぶカンちゃんが自分の夫でよかったなと思う。
そしてその翌日から始まった新年度。
弊社の我が営業所にもフレッシュな新人さんたちが入ってきた。
また他営業所から異動してきた人たちもいた。
いつの間にか俺が営業所内で最古参になっていたのだが、今夜は新入りさんではなく営業所の古株仲間のことをお伝えしたい。
「ヤーマン」
30歳くらい。
ノンケ、妻子あり。
非イケメンでお調子者のおバカキャラながら、何でかけっこう俺を慕ってくれるので仕事帰りに居酒屋に行くこともある。
ヤーマンの娘さん(3歳)に会ったこともあるのだが、お利口さんでとてもかわいらしかった。
俺は決してヤーマンのことは嫌いではない。
一昨日は新入社員の歓迎会を兼ねて、そのヤーマンはじめ数人の後輩たちと飲みに行った。
そしてヤーマンが悪いことを言った。
「明日と明後日、1泊2日の出張予定だったんすよ。だけど急に別の人と変わったので行かなくなったからもう嬉しくて嬉しくて」
その出張がそんなに嫌なのかと思ったら違った。
「出張がキャンセルになったことは嫁には内緒。出張のふりをして明日は飲んで、サウナ行って、マン喫で読みまくってカプセルホテルで泊まるんですよ~めっちゃ自由❗️超ラッキー」
その場にいた女性社員たちからは、
「信じらんな~い、奥さんかわいそう」
「ウソついて外泊なんてしたらダメでしょ、家に帰ってちゃんと子守しなさいよ」
俺も全く同感だった。
ヤーマン、ちゃんと家に帰りなさい❗️
だけど男たちの反応は違った。
「うわ~、いいないいな1人が羨ましい」
「堂々と外泊できるチャンスなんか絶対にないんだからナイスなプランじゃん、ヤーマン」
ノンケ男たちはみんなヤーマンの悪だくみを支持していた。
悪ヤーマンは出張を装うために大きなバッグで出勤し、不要な着替えを用意して家に帰ったら汚れ物みたいにくしゃくしゃにして洗濯機に下着や靴下を突っ込むそうだ。
ノンケ男とゲイな俺の思考回路とは全く違うことに驚いた。
妻子がいることはそんなに束縛感なのだろうか?🤔
だけどヤーマンのスマホの待ち受け画面は娘さんの画像だし、溺愛しているのは知っている。
もちろんヤーマンのこの手の悪だくみはほぼ毎回奥さんに見破られるらしく、先日も別件でこってり絞られたと言っていた。
「うちの奥さんから『鬼電👹』がかかってきて超怒られたんです。家に帰ってもすんげえ怒られたから平謝りしてやっと許してもらえたんですよ~」
聞けば残業とウソついて同僚と飲みに行き、サウナを満喫している時に鬼電の餌食になったらしい。
さらに奥さんに内緒でNIKEだかPUMAの高級スニーカーを勝手に買って小遣いが足りなくなって激怒されたこともあるらしい。まるっきりダメ男やな。でも嫌いじゃな~い。
さて飲んだ次の日の昨日の朝。
年度始めで営業所もかなり忙しくみんなバタバタしていた。
俺もあれこれ仕事をしてたのでヤーマンがいないことに最初は気づかなかった。
「あれ、ヤーマンは?」
(やっぱり出張に行ったのかな?)
「寝坊したから1時間休取るってさっき連絡ありました😅」
「すみませ~ん」
1時間後に重役出勤ヤーマン。
笑っちゃったけど言ってやった。
「バカ野郎め❗️こんのバカチンめが~」
やはり奥さんに言い付けてやりたい。しかし奥さんの連絡先を知らないからブログに書いてやった。笑
もしカンタロウがヤーマンみたいだったら得意技のアキレス腱固めをかけることにする。
「ショウタってすぐ束縛してくるからな~」
本当にそう思ってなきゃいいけど不安…