ちょっとした用事があって、夫カンタロウに電話をかけたけどつながらなかったという話を前回させてもらった。

その続き。



昨日、デートの待ち合わせ場所に着くと珍しくカンタロウが到着してなかった。


・電話には出ない

・折り返しの電話はない

・心が沸き立つフォローのメールはこない

・待ち合わせ時間と場所を指定しておきながら現れない。


これだけあるんだからと、もう鬼を首を取ったも同然で彼の到着を待っていた。



数分していつもどおりの穏やかな表情でカンちゃんがやってきた。

待ち合わせに少し遅れたことには「ごめん」と言っていた。


ごめんなんて言ってもそうそう簡単には免じませんからねっ❗️

という気持ちだった。


カンタロウの用事(買い物)が済み、俺も前々から欲しかった仕事用カバンを買うことができた。


「食品売場に行くよ」

と言われてので黙ってついていく。


地下に降りると、

「ほら、これ。見て❗️すっごく美味しいやつ。前からショウタに食べさせてあげたかったんだよ😃」

と果物ゼリー詰め合わせを見せてくれた。



「本当はもっと喜ばせてあげようと別のデパート売場でデザートを探してたんだけど、やっぱりこっちのゼリーの方が美味しそうだから」

遅刻(といっても5分くらい)の理由は俺のために美味しいデザート選びをしていたから、なんて言われると、もうぷんぷんする理由はどこにもなかった。



「ショウタが拗ねてるのは知ってたんだけど、本当に忙しかったから電話の折り返しとかできなかったんだよ」

もう充分だった。ありがとう。



「さっきのショウタが買ったバッグ、プレゼントしてあげる。だからもうぷんぷんすんなって」

これ以上優しくしてくれなくてもいいのに。俺だってごめんを言いたいのに。



そっとカンタロウの顔を見ると、嬉しそうなちょっと困ってるようなあまり見たことがない表情だった。


昨日は何かの記念日でもなかったので、カンちゃんからのバッグプレゼントの申し出はもちろん断っておいた。自分で買うってば。

その気持ちだけですごく嬉しいなと思う。



前に友達に言われたことを思い出した。

「あまりカンタロウさんを困らせたらダメだよ。図に乗りすぎたら呆れられて振られるかもよ」

その通りだなと思った。失ったらどうしよ…



「カンちゃん。いつもありがとう。こうして楽しくデートできるだけで満足だよ」

その日初めてちゃんとカンタロウの顔を見て言えた。



カンタロウを好きな理由。

精一杯の優しさで包んでくれるからだと分かった。

俺もカンちゃんの優しさに負けないくらいの愛情を注いでいこう。



「ショウタ」

呼ばれた。

「何?」

答えた。



「何だか嬉しそうだからいつもみたく、ここで歌ったり踊ったりしてみたら?ニヤリ


ここは銀座。歩行者天国。


歌ったり踊ったりする場所ではない。


ものすごく暑くて、たくさんの人、人、人。



なので歌も踊りもほんの控えめ一瞬だけにしておいた。


その代わり彼の二の腕に汗だくの俺の頬を乗せて肘を絡ませて歩いた。

2人で大笑いしながら歩いた歩行者天国。



夏らしいデート。

俺が好きな人は俺を好きでいてくれれば幸せだなと思う。