ランダム・ウォーク 223 
「市場サイクルを極める」02 ハワード・マークス サイクルのどこに位置するか? 
 Masrweing The Market Cycle  貫井(きぬい)佳子 訳
 Getting the Odds on your Side

up 2024 04 15 (Mon)
 
29 今サイクルのどこに位置するか 自問自答せよ。
 
■ 今、サイクルの上昇期の入り口にいるのか。それとも終盤にあるのか? 
■ あるサイクルにおいて、しばらく上昇期が続いている場合、すでに危険な領域に到達しているのか? 
■ 投資家の行動を駆り立てているのは強欲か、それとも恐怖か?
■ サイクルに沿った流れの結果、相場は過熱している、そして割高になっているか、冷え込んでいる、つまり割安になっているか?、
■ 声らの点から判断されるサイクル内で現在の位置において、防衛性を重視すべきか、積極性を重視すべきか?
 
30 こうした要素に目を向けることで、趨勢、あるいは勝ち目を理解し、負ける回数よりも勝つ回数を多くする強みを身につけている。
 負ける確率よりも勝つ確率が高いかどうかを感じる取ることができる。重要なのは、これらのことがどれも現在の状況の観察をもと にして判断できる、ということだ。現況を見極めれば、未来を予測する能力に頼らずとも未来に備える方法がわかる
 
 
35 サイクルの性質。
 
 ひとつのサイクルの中の出来事は、ただ単に次の出来事へ続くという流れでとらえるべきでない。むしろ、はるかにもっと重要なことは、 それぞれの出来事が次の出来事を引き起こすととらえるべきである
 
36 私はサイクルの浮き沈みと、軌道の一端からもう一端へと揺れ動く振り子の振動、という二つの似たような表現を使っている。
 さまざまな現象を説明する際に、サイクルという言葉を用いる場合もあれば、振り子に例える場合(たいていは心理にかかわるもの)もある。 ひとつの特定の現象について語るのに、あちらではサイクル、こちらでは振り子と表現することすらある。じつのところ、この二つを厳密に使い分けたり、 その時々にどちらの表現を選んでいる理由を説明したりしても、うまくできない。
 
37 私はものごとを視覚的に考える傾向がある。だから、視覚的なイメージによってサイクルと振り子につながりを説明することならできる。
 サイクルは中心点(あるいは長期トレンド)のまわりを行ったり来たりする。同様に、振り子は中心点(または基準点)を通りながら前後に 揺れ動く。そうやって前後に揺れている状態の振り子の視点をもち、左から右へ動かしたらどんな軌道を示すだろうか。サイクルである。
 じつは、二つの表現に根本的な違いはない。振り子は、サイクルのやや特殊なケースにすぎない。
 
■ ある現象が一方の極限に向かって揺れ動くと、この動きはそれ自体がエネルギーを生み出し、ため込む。 やがて、自ら増やした重みによって、中心からさらに離れていくことが難しくなり、それから先はもう進めない 極限に到達する。
■ 結果的に、その方向への動きは止まる。ひとたび止まると、重力によって中心傾向あるいは中心点の方向へと 引き戻される。そして、ため込んだエネルギーがその揺り戻しを後押しする。
■ そして、その現象が到達した極限から中心点に向かって戻る間に、揺れ自体がその動きに惰力(だりょく:モメンタム) を与え、中心点を超えてからも反対の極限に向かった動きが続く。
 
47 全体的な傾向からの深刻な逸脱、そして逸脱のタイミングやスピードや程度の違いは、概して、心理的な移り変わりに よって生じる。物理的な特性ではなく、人間の心理をサイクルのエネルギーや惰力が主な源である
 
48 サイクルが出来事の連続によって形成され、それらの出来事が次の出来事を引き起こす(因果関係)。
 そうした連続するできごとによってサイクルがさまざまな領域で生じる一方で、ひとつの領域のサイクルの変動が、別の 領域のサイクルにも影響を及ぼす。景気サイクルは器量利益サイクルに影響を及ぼす。利益サイクルに左右される企業の業績 発表は、投資家の姿勢を変化させ、投資家の姿勢の変化は相場を動かす。そして、相場の変動は信用サイクルに影響し、 それが景気、企業、市場へと波及する。
 
61 人間は、パターンやルールを探し求める
 
 人間は進化の過程で、現実の生活の中で生きていくためには、パターンやルールを探し求める。経験を通じて一日や一年のなかでサイクルを 認識する修正は、原始時代からあった。たとえば、母ライオンは子度を連れて水飲み場にくる時間帯にそこに行くには危険だ。ある作物は春よりも 秋に植え付けをしたほうが収穫が多いことを生活の中で知った。
 ルールやパターンが絶対であればあるほど、暮らしやすさは増す。今では、説明のつくパターンを探し求める機能が人間の脳に根づいている。
 
 しかし、そこから勝利の方程式を求める方法は一筋縄ではいかない。我々は、ランダム性に惑わされる世界に生きている。
 
62 直観という流れに逆らって泳ぐことは困難なことだ。人間の頭は一つひとつの出来事にひとつの明確な原因を特定するようにできている ため、無関係あるいはランダムな要素を受け入れようとしない場合がある。そこでまず大切なのは、成功や失敗が時として、優れた技能やどうしようも ない無能さではなく、『偶発的な状況』に起因すると気づくことだ。ランダムなプロセスは自然界の基本であり、われわれの日常生活のいたるところで 見られる。だが、ほとんどの人はそうした点を理解していないか、あまり考えずにいる。
 
65 相場が今後も上昇したり下落したりし続けるのはな違いない。そして、①なぜ変動するのか、②どのような要因からそうした変動が ある程度、差し迫った状態になるのか、という点はある程度分かる。だが、いつ上向いたり、下向いたりするのか、動き始めたらどこまで行くのか、 どんなペースで変動するのか、いつ中心点に戻り始めるのか、反転してからどこまで動きつづけるのか、といったことは、これから先も絶対に 知りえない。よくわからないと認めることは多々あるのだ。
 ただ、サイクルのタイミングについてほとんど知らない、という認識は、サイクルに無知な大多数の投資家に対しては大きな優位性となる。
 
◇◇◇ 独白 
 そうか、多くの教科書では、先のことは不確定で未来を知ることはできない、とほぼ断言している。
 だが、サイクルの位置について考え、現況を見極めれば、未来を予測する能力に頼らずとも未来に備える方法がわかる。
 そして、長期的には、勝つ確率を向上させることができる。
 
 現在のサイクルの位置について考える。まず、大局観 (長期には右肩あがり) を示し、仮説をたて、現在の位置を推定する。
 状況が変わるごとに、仮説を振り返り、場合によっては、大局観を見直す。
 仮説 例:
・ 地政学リスク(イスラエルとパレスチナ/イランの対立は数千年の根深さ)。イランは本気でイスラエルと戦争(第五次中東戦争)をしない。
・ 米国経済ももいずれ下火になり、夏から秋には、利下げに踏み切る。
 年頭からの日経平均下落(42,000 から 38,000)はいずれ底打ちし、四月下旬の決算発表を織り込み、40,000 を回復する。
 夏場には、ふたたび 37,000 に落ちる。米大統領選で「もしトラ」なら材料出尽くしで、年末に 45,000 へ。