読書日記 174 
『嵐の中に立て』 大人の流儀 名言集 伊集院静 講談社 \1,100

up 2024 03 17 (Sun)
 
 昔、日経の連載小説でこの作家の『琥珀の夢』を読んだことがある。サントリーがウィスキーを開発する物語だった。そのなかで、その提案に社長だか会長だかが 「やってみなはれ」と応えるシーンがあった。
 
 この『嵐の中に立て』は、週刊現代に連載されていたものを、適当に抜粋し、一冊にまとめたもののようだ。
 いくつかの気になった表現と、わたしの経験、考察を加えらコメントをする。
 
◇ 「身嗜(みだしな)み」でまず必要なのは、体調だ
 体調を整えておかなくては、その席で相手に気がかりを与える顔色をしていては失礼だからだ。
 
 わたしは、4週ごとに理髪店に行く。
 苦髪楽爪(くがみらくづめ)ということばがある。苦労しているときは髪が早く伸び、楽をしているときは爪が早く伸びる。
 一か月でこんなに伸びる。苦労しているのだなあ。
 「いかがいたしましょうか」「8ミリのスポーツ刈り」
 ときどき「8ミリはございません」といわれることがある。「それでは6ミリでスポーツ刈り」
 あまり伸びすぎると、ひとに不快感を与える前に、自分に不快感を与える。
 太極拳教室では、半数の男性の頭は禿げている。あまり禿げると、赤外線の攻撃がきつい。

 
 
◇ 「栓方(せんかた)ないことを口にしなさるな」母は私にそう教えた」
 言った人にも聞いた人にも、どうしようもないことを大人は口にすべきでない
 
 
 そう、世の中にはコントロール可能なこととコントロールできないことがある。
 その人は、自分の努力や意思でどうしようもないことを言ってはいけない。
 そして、自分でも、自分でどうしようもないことを考えたり、言ったりしてはいけない。
 
 「人生の目的はなにか」など考えてもわからないことを考えるのは時間の無駄である。
 死後はあるのか、地獄はあるのか。そんなことはわからない。お釈迦様は訊かれて、「不語(ふご)」といったそうな。
 
 なお、「いわずもがな」という表現がある。
・「言わずと知れた」
 彼は言わずと知れた優秀な営業マンだ。
 お酒の飲みすぎが健康に与える影響は、言わずと知れたことだ。
・「言わぬが花」 
 「言わずもがな」の、「余計なことを言う」のニュアンスに似た言葉。口に出して言わない方がいいときに使 う。対義語に“言わぬは損”という言葉がある。
 失敗の言い訳をしたい気持ちはわかるけど、言わぬが花だよ。次に生かして。
 あの件については、B部長の前では言わぬが花です。
 
 それでも、つい口に出してしまうのがひとの性(さが)。

 
 
◇ 人間にとし鬱々とした日を送っていたある日、妙な声を耳の奥で聞いた。「よせよせ、バカがいろいろ考えるな」
 先日も友人が亡くなっていろいろ考えたが、そういう感情は自分の内側にであれこれすることで、 表に出すものではない。それが大人である。

 
 
 そう、考えても仕方がないことを考えないようにする。自動指向に陥らないようにする。

 
◇ 食にかかわることは、耳にするとどこか耳に障るところがある。
 「あの店は美味いね」「そうだね、とくにあそこのXXXは絶品だよね」
 食の話には、自分はその店に行ったことがあり、そこで美味しいものをたべたんだ。そのうえ、 これが美味しいとわかる人間なんだ、といいたげなうぬぼれが伝わる。
 
 
 これは、食だけでなく、旅についてもおなじ。「パリは美しいね」「そうだね、ノルウェイもすばらしいね」。

 最近は、30万から50万円で北欧1週間とか、ゆったり豪華船で三か月で船旅世界一周500万円、などの 広告が目立つ。
 自分がいくお金、体力、気力がないので、見てみないふりをしている。若いころとちがちがって時間だけはあるのだが。
 
 
◇ 何度も読んでみると、体の奥にしみこむような一説がある。
 それは友人の再会と似て、人も書も、接する側の成長によって見え方、読み方が違うからかもしれない。
 
 
 ちかごろ貧しくなって、本を昔のように奔放に買えなくなってきた。
 仕方がなく、紙箱や、木箱に入れた古い本を引っ張り出して読み直している。
 そう、昔読んだときの印象が全く変わっていることがある。
 それは友人の再会と似て、人も書も、接する側の成長によって見え方、読み方が違うからかもしれない。
 ことに、人生の晩秋によって見え方、読み方が違うからかもしれない。

 
 
◇ 吹いてくる風が頬や胸板にあたるなら、向かい風に立っていることを学びなさい。
 私たちの生きていく道は、やってみなければ見えないもの、出会うことがないものがたくさんあります。
 
 
 もとの先生が転職で、エアロビックス・キックボクシングの講師が、最近変わった。
 自分の意志で、整体の先生が変わった。
 アレルギー科の先生のお勧めで、内科医を変えた。
 最近、おもしろいチューバーに出会った。
 そう、自発的に、自ら道を変えることもできるが、向こうの事情で変わることもある。
 人も書も、接する側の成長によって、人生の時期によって、見え方、読み方が違うことが少なくない。。
 そう、私たちの生きていく道は、やってみなければ見えないもの、出会うことがないものがたくさんあるんだ。

 
 
◇ 人は寿命で、この世を去るものである。
 人は病気や、事故でこの世を去るものではない。と私は思っている。
 人は寿命で、このようを去るものである。
 
 
 著者は、そのの理由を説明していない。
 
 ちなみに、伊集院さん(1950年2月9日 - 2023年11月24日)は、2020年1月、くも膜下出血、2023年10月、肝内胆管がんで死去した。73歳没。
 くも膜下出血:脳動脈瘤の破裂、肝臓に発生するがん。胆管(胆汁が通る管)。
 くも膜下出血や、肝内胆管がんで病気になったが、死亡したのは、寿命だとおもっていたのだろうか。

 
 
◇ 肝心はともに生きた時間であり、さらに言えば今日でしかないだろう。
 人はだれでもいづれこの世から居なくなる。これだけはわかっていることだ。
 ― 魂は永遠だから・・・
 魂? バカを言いなさんな。そんなものはも見たことはない。永遠? 気持ちの悪い言葉を使わんでくれるか。この宇宙とてやがて超滅する というじゃないか。
 
 
 この本は、「週刊現在」に連載中のエッセイから単行本のしたようだ。
 期間は、2009/7/18号 から2023/12/16 号とある。ウィキペディアによると、伊集院さんはの生存期間は、1950年2月9日 - 2023年11月24日 とある。
 とすると、この最後の言葉が書かれたのは、くも膜下出血、2023年10月、でたおれ、肝内胆管がんで死去した間ということになる。
 死に直面していたころの言葉、ということになる。魂とは来世の存在はきっぱりと笑い飛ばしている。宇宙の消滅さえも見据えている。

 
 おわり。
  最近読んだ本
 
 最近読んでいる本、あるいは、最近読んだ幾冊かの本たち。
【あ】 「あらし」シェークスピア、「阿頼耶識」、「アルゴリズム辞典(C言語編)」 「アルゴリズムとデータ構造(JAVA編)」、
【い】「1Q84」村上春樹、「一九三四冬―乱歩」久世光彦、「一九八四」ジョージ・オーウェル、「茨木のり子詩集」茨木のり子、 「意識は傍観者である」D・イーグルマン、
【う】『うつを気楽に治すには』斎藤茂太『海辺のカフカ』 村上春樹、「宇宙からの帰還」 立花隆、「『歌』の精神史」 山折哲雄、
【え】「HTMLタグ辞典」、
【お】「老いる意味 うつ、勇気、夢」  森村誠一、「オーパ!オーパ!」開高隆、
【か】「風の中に立て」伊集院静、「Google Keepの基本」、神谷美恵子、「神谷美恵子日記」神谷美恵子、「輝ける闇」開高健、「会社四季報」、「会社四季報プロが選ぶ500銘柄、」 「考えない練習」 小池龍之介 X 池谷裕二、「風に訊け」開高健「カシオ電子辞書」
【き】「危機からの脱出」塩谷七生、「嫌われる勇気」アドラー、「吉里吉里人」井上ひさし、 「今日から使える統計解析」大村平、
【く】「グレート・ギャツビー」F・S・フィッツジェラルド、「クリスマス・キャロル」チャールズ・ディケンズ、「クリパル・ヨガ」スワミ・クリパル、
【け】「賢者の贈り物」O・ヘンリー、[現役87歳 トレーダー]  藤本茂、「遣灯使」多和田葉子、
【こ】「心の旅」 「言葉を育てる」米原万理、「幸福論」アラン、「こころの旅」神谷恵美子、
【さ】「作文教室」井上しさし、
【し】「死という最後の未来」石原慎太郎、曽野綾子「小学生がたった一日で19かける19までかんぺきに暗算ができる本」 小杉拓也、 「自分でできるスポーツマッサージ入門」、 「小説読本」丸谷才一、「小説作法」 スティヴン・キング、 「自分でできる筋膜リリース パーフェクトガイド」、
【す】「スマホ入門」、「スタンフォードの自分を変える教室」「スタンフォードの心理学講義」 「スタンフォードのストレスを力に変える教科書」 ケリー・マクゴニガル、  「スヌーピー」C.シュルツ、谷川俊太郎、 [常識]の研究 山本七平、 「創造的思考について」外山滋比古、
【せ】「青春の詩」 サミュエル・ウルマン、「世界中が夕焼け 穂村弘の短歌の秘密」穂村弘、山田航共著、「世界の終わりとワンダーランド」村上春樹、「禅マインド ビギナーズ・マインド」鈴木俊隆(としたか)、
【そ】「その日をつかめ」ソール・ベロー、「相場の論点」広木隆、
【た】「単純な脳」池谷裕二、「歎異抄」蓮如、五木寛之、「太極拳24」「太極拳48」、
【ち】「チャート分析の真実」吉見俊彦
【つ】「月と6「ペンス」 モーム、「詰将棋集」高橋道夫9段、羽生善治9段
【て】「適応的市場仮説」アンドリュー・W/ロー、 
【と】「投資で一番大切な20の教え」ハワード・マークス、「ドーナツを穴だけ残して食べる」、「遠野物語」柳田国男、 「遠い山なみの光」カズオ・イシグロ、「都市間通信」O・ヘンリー、 「独習JAVA」、
【な】「脳と心の仕組み」池谷裕二、「七つの習慣」S・コヴィー 「何がめでたい、90歳」佐藤愛子、「夏の夢」開高健、「中村天風」、
【に】「人間にとって成熟とはなにか」曽野綾子、【人間の未来 vs AIの未来】羽生善治・中山信弥、
【ね】「ねじまき鳥クロニエル」村上春樹、
【の】「ノルウェイの森」村上春樹、「脳と心のしくみ」 池谷裕二、「動物農場」ジョージ・オーウェル、
【は】「走ることについて語るときに僕の語ること」村上春樹、「はじめての八十歳」山藤章二、「ハムレット」シェークスピア、 「八十八歳を生きる― ヨーガとともに」佐保田鶴吉、「白鯨」H・メルビル、「腹だけ痩せる技術」植村美穂、
【ひ】「ひざ痛がよくなる一分間ほぐし」古賀秀之、「日の名残り」カズオ・イシグロ、「137億年の物語」クリストファー・ロイド
【ふ】「プロの投資家の先を読む思考法」 渡部清二、「文体を夢見る」丸谷才一、「不実な美女か貞淑な醜女(ぶす)か」米原万理、「ブッダの瞑想法」地橋秀雄。  「藤井聡太論」谷川浩二、
【ほ】「骨だけの文章」倉橋由美子、
【ま】 「Murphy's Law マーフィの法則」、「真夜中の太陽は輝き続ける」米原万里、「末那識」、「街とその不確かな壁」村上春樹、 「真夏の夜の夢」シェークスピア、「まいにちが祭り」小林ハル、 「まいにち中国語」、「まいにちフランス語」、「まんがで分かる中村天風の教え」鈴木彩、
【み】
【も】「求めない」加島祥造、
【や】「藪の中」 芥川龍之介、
【よ】「予想通り不合理―行動経済学」ダン・アリエリー、「ヨガ入門 各種」、
【ら】『リーダーを目指す人の心得』コリン・パウエル
【わ】 「私の文章修行」 週刊朝日編、「私だけの宗教」玄侑宗久、「Windows10 改定」「Windows11 入門」