読書日記 167 
「投資で一番大切な20の教え」05 ハワード・マークス リスクとは、将来起こりうることのほうが多いことという意味 
 The Most Important thing  貫井(きぬい)佳子 訳
 賢い投資家になるための隠れた常識 
 Uncommon Sense for the Thoughtful Investor

53 up 2024 01 27 (Sat)
 
リスクとは、将来、実際に起きることよりも、起こりうることのほうが多いことという意味
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・ 人は生来、リスクを避けたがる傾向がある。ある資産へ投資を検討するには、 そのリスクがどれぐらいで、自分が許容できるかを判断しなければならない。 
・ 投資を検討する場合には、潜在的リターンだけでなく、付随するリスクも評価する必要がある。
・ 運用成績を評価するには、どれだけリスクをとったか、つまり、「リスク調整後のリターン」 を知る必要がある。」 
 
[リスク調整後のリターン] 
 リスク1単位当たりのリターンのこと。
 資産運用のリスクとリターンはトレードオフの関係にあるが、リターンを 比較する際に、リターンの高低で判断するのではなく、得られたリターンに対してどれだけリスクを 取っていたかを反映させたもの。シャープ・レシオなどいくつかの指標がある。
 
[シャープ・レシオ] 
 シャープ・レシオ = (ポートフォリオの収益率 ― 無リスク資産の収益率) / ポートフォリオの収益率の標準偏差
 
 リスク(標準偏差)1単位当たりの超過リターン(リスクゼロでも得られるリターンを上回った 超過収益)を測るもので、この数値が高いほどリスクを取ったことによって得られた超過リターンが 高いこと(効率よく収益が得られたこと)を意味する。異なる投資対象を比較する際に、同じリスク ならどちらのリターンが高いかを考えるときに役立つ。
 このシャープ・レシオは、リスク調整後のリターンを測るものとして、投資信託の運用実績の 評価などにも利用される。
 
資本市場線
 資本市場線(Capital Market Line、CML)とは、横軸にリスク(標準偏差)、縦軸に期待リターンをとったときに、安全資産と効率的フロンティア上の接点ポートフォリオを結ぶ直線のこと を指す。
69 リスクの高い投資というのは、先行きがより不確かな投資のことである。つまり、リターンの 幅が広い。
 価格が公正な場合、リスクの高い投資には以下の三つが伴う。
① 高いキタイリターン 
② リターンが低くなる可能性。 
③ 場合によっては損失が出る可能性。 
 つまり、あるリスクについて、リターンは資本市場線上で確率分布をする。
 
さまざまなリスク
 
目標を達成できないリスク  
72 リスクは個人的で主観的なもので、絶対的、客観的なものではない。
 6%のリターンは、年8%を期待するある年金基金にとっては深刻なリスクである。4%を 期待するある個人には、満足できるリターンである。
 
アンダーパーフォーマンスのリスク  
 どんな投資家も常に、市場平均を上回ることはできない。
 
キャリア・リスクリスク  
 資産の運用者を任されたものは、アンダーパーフォーマンス、ある損失を出すことに対し自分の職を 失う恐怖を感じるだろう。
 
型からはみ出すことによるリスク  
 周りと異なる行動をとることによるリスクがある。周りが平均的な手法で平均的なパーフォマンス をあげているとき、周りとは型の異なる手法をとり、アンダー・パーフォーマンスになると、会社をクビに なるかもしれない。
 
非流動性リスク  
 流動性の資産を運用しているとき、必要な時に妥当な価格で現金化できないことがある。
 
違った歴史  
80 何が起こったか(たとえば損失が発生した)という事実は、それが起きるべくして起きたことを 意味しない。また、何かが起きなかったという事実は、それが起きる可能性が低かったことを意味する ものではない。
 世の中には『運がいいだけの愚か者』と呼ぶ人々がおり、短期間では彼らを有能な投資家と 見分けることはむずかしい。
 問題は、投資を実現したあとでも、それに付随するリスクの大きさを知ることはできないこと。
 当然のように、投資がうまくいったという事実は、リスクが高くなかったということを示すのもではなく、 その逆もまたしかりである。成功した投資について、その好ましい結果が必然だったか、はたまた100%ある 可能性のひとつにすぎなかったのか、どうやって判断すればいいのだろうか。失敗した事例にも同じことが言える。
 
82 こうしてたどり着くのが、「リスクとは、将来実際に起こることよりも、起こりうることのほうが多い」 ということである。
 未来について知ることは絶対に不可能である。
 「いつだって、起きそうなことは起きず、起きそうもないことが起きる」
 
85 ほとんどの場合、投資パーフォーマンスは、① 地政学要因、② マクロ経済要因、③ 企業レベルの 要因、④ テクニカル要因、⑤ 心理的要因 の組み合わせで決まる。
 これらの要因の組み合わせで、将来起きる可能性がたくさんあるが、現実となるのは一つだけである。
 さらに、投資家自身の洞察力や慎重さ、あるいは、運に起因するかもしれない。起こりえた数多くの 「違った歴史」でそのようなかっかが生じたはずなのかは、まったくわからない。
 
リスクを理解することに関する著者(ハワード・マークス)の結論  
 
◆ リスクは未来にのみ存在する。未来がどうなるかは誰にもわからない。 
 終わった過去にはあいまいさはない。ただ起こったことが起きたという事実があるだけだ。だがその事実は、 その結果を生み出したプロセスが明確に信頼に足るものであったことを意味するわけではない。過去に あらゆる可能性が起こりえたはずだ。しかし、実際に一つしか起こらない。さまざまな展開があったという 点がなおざりにされるのだ。
 
◆ リスクをとるかどうかという判断は、これまで何度も繰り返されたパターンを考慮したうえで下される。 そして、多くの場合、パターン通りのことが起こる。だが、時として、今までとまったく違った事態が生じる。 そして、ありえないと思われた話が現実になることも、まれにはある。 
 
◆ 予測は過去の常識に近い範囲内で建てられる傾向があり、ほんの小さな変化しか織り込まれない。 要するに、人はいつも未来は過去と同じようになると見込み、変化が生じる可能性を軽視するのだ。
 
◆ 「最悪の場合」の予測という言葉があるが、実際に起きた状況はそれよりももっと悪いことがしばしば ある。投資の世界では、事象の発生は正規分布ではない。しばしば「ファット・テイル(fat tai])」になる。 
 
◆ リスクは不定期に訪れる。事象の発生はランダムではなく、集中することがある。 
 ファット・テイルとランダム性により、高いレバレッジをかけている投資家の命運が尽きることが少なくない。
 
◆ 人はリスクを計測し、未経験の事象を理解する自分の才能を過信する。
 
 つづく
 
◇◇◇ 独白 
 時節柄、9-12四半期の決算の報告がつづく。
 「ファナック 中国受注低迷 FA部門低迷」「信越化学 純利益30%減 米住宅需要一服 塩ビ市況が悪化」 「信越ポリマー 株価 8%安 半導体の回復遅れ懸念」「ニデック 純利益下方修正 中国市場の競争激化」 「安川 純利益6%減」「ウェルシア 減益」「資生堂 減益 中国で不買運動」
 
 天下のファナック、信越化学、ニデック、安川、ウェルシア、資生堂が、減益。信じられない。
 横浜の片隅で信じるだけでは、企業業績は向上しないのだなあ。でもまあ、減益。赤字じゃないんだ。