読書日記 144  ヒューリスティックス(経験則)を用いて学び始める 


 
 Adaptive Markets 「適応的市場仮説」 Financial Evolution at the Speed of Tought 危機の時代の金融常識 02
 アンドリュー・W/ロー 望月衛・千葉敏生 訳 東洋経済新報社 \ 4,500
 
 up 2022 02 07 (Mon)
 
 click here これまでのまとめ
 
「不安や恐怖に対する反応」「適応的市場仮説」「帰無仮説」「不確実な状況とリスク」「損失回避」「確率マッチング」 「少数の法則」「代表性」「代表性ヒューリスティック」「合理化する動物」「プルダウン」「感情的ヒューリスティック」 「快楽中枢」「内在性」「限定合理性」
 「自然選択による進化論」「選択のパワー」「変化は人生のスパイス」「思考の速さで進む進化」
 
 

【進化心理学】    
 
250 進化心理学は、社会生物学への対応として、1980年代に中盤に、心理学者のレダス・コスミデスと、人類 学者のジョン・トゥービーによって開始された。
 人間の心理は、進化の過程で自然選択によって形成された。ただし、人間の心理は必ずしも現在だけでなく、過去の 問題を解決するために適応している。人間の進化の歴史に基づいている。、
 人間の普遍的的行動は、過去数千世代にわたって進化してきた脳の多数のモジュール式のプログラムの産物である。
 
251 「社会生物学」はある社会現象を現在の生物学的適用という観点から、「進化心理学」は過去の神経系の適応 という観点から説明する。
 
 

【ヒュリスティックス (経験則)】    
 
264 充足化のプロセスの中で、いつ最適化をやめるか、いつ十分に満足できる 意思決定に到達するかをどうやって判断するか?
 そもそもそんな判断はしない。試行錯誤によって経験則を築き上げていくだけだ。
 
265 学習はm概念の進化の一形態だ。私たちは最適化とは程遠いヒューリス―― つまり経験則――を用いて新たな行動を学ぶ始める。 
 そのヒューリスティックスを用いた結果、否定的なフィードバックが返ってくれば、 そのヒューリスティックスを変更する。肯定的なフィードバックなら使い続ける。
 
 生物の進化と人間の学習にはおおきな違いがある。私たちのヒューリスティックス は思考の速さで進化しうる。抽象的な思考を行い、事実と異なる状況を想像し、個人や 共同で新たなヒューリスティックスを考え、その結果を予測する能力は、人間だけの 特権と言える。
 
266 このフィードバックで感情は重要な役割を占める。感情は私たちの ヒューリスティックスを行進させてくれる主要なフィードバック機構だ。愛情、憎悪、 共感、嫉妬、怒り、不安、喜び、悲痛、恥といった感情は、どれも重要な目的をはたす。 私たちの環境についての情報を与え、私たちが自分の行動をどう変えたいと思っているか を教えてくれるのだ。
 
 

【私たちの脳は気まぐれの集合体だ】    
270 私たちの脳は気まぐれの集合体だ。私たちはバグを含むシステムではなく、 バグでできたシステムなのだ。こうして気まぐれが一定の状況下で作用しあうと、 しばしば経済学者が「合理的」と呼ぶ行動を作り出す。でも、状況が変われば、経済学者が 「とんでもなく非合理的」と呼ぶ行動を作り出すこともある。こういった気まぐれは、 けっしてランダムなものではなく、その場限りのものでも、非体系的なものでもない。 経済的合理性ではなく、存在を最大の目的とする脳の構造が作り出すものだ。
 
271 私たちの神経構造は、何百万世代もかけてゆっくりと変化していく長い 進化のプロセスによって形成されてきた。私たちの行動は脳によって形作られる。進化の 観点から見て古く、ものすごい強力な行動もある。それらの行動は、自然選択、 繁殖と失敗、もっといえば、生と死という直接的な力によって、人間のDNAそのものに 組み込まれてきた、 
 
 たとえば、偏桃体が制御する私たちの恐怖反応は、数億年の起源がある。「怖がる能力」 を通じて危険をすばやく察知できない原始の動物(人類の祖先)は、平均的にみれば より良い遺伝子を子孫に残せなかった。
 
 数百万世代にわたり、生と死の選択圧が人類の祖先の遺伝子に作用して、現代のような行動を生む人間の脳をつくりあげたのだ。
 
 
 つづく