大栗博司 「重力とはなにか」 01 人間原理 幻冬舎新書
up 2018 05 09 (Wed)
【著者紹介】
大栗博司(おおぐりひろし 1962年--) 京都大学理学部、大学院、理学博士。東大助手。プリンストン大学講師。 カリフォルニア工科大学教授。カリブ冠教授。東大カリブIP数物理連携宇宙研究機構主任研究員。
素粒子理論、超弦理論。
わたしの部屋には「未読の本」や「読み直したいの本」が複数積まれている。 それらの積まれた本、パイル(塔)という、ときどき「重力崩壊」をおこし、床になだれ落ちる。「わたしを読んでください」といっている一番手ぢかの本を手に取る。
表紙をめくり、タイトルページ(「前づけ」の扉)を見ると、「2015 07 25」とある。ああ、この前読んでから二年になるか。
この本はわたしに、「自然科学とはなにか」「自然科学の理論はどのように発展してきたか」を教える。 ああ、そういうことだったのかと圧倒される。だが理解できない部分も多い。最近は、理解できないことが多いと嬉しい。 ああ、人生(この場合は、自然というべきか)、深遠だなあ。理解できるところを感嘆しながら書く。
こんなことも知らないで、3/4世紀を生きてきたのか。それにしてもあと少し、命が欲しいなあ。
273 宇宙は一つだけでなく、無数にある?
超弦理論(むかしの、超ひも理論)の目指すところは「究極の統一理論」をつくることである。宇宙という玉ねぎには、それ以上皮をむくことが できない「芯」があり、それを説明する最終的な基本法則を発見するのがこの理論のゴールです。
その基本法則には、理論的な必然性があるのか、それとも偶然に決まったものか。
惑星の公転半径などは、太陽系ができた時の初期条件によって偶然に決まったにすぎません。
超弦理論では六次元の幾何学によって三次元空間の素粒子模型が定まるのですが、そこで使う六次元空間は一種類ではなく さまざまな形があり得ます。その選択肢はなんと10の500乗もあるとの計算もあります。
宇宙は一つだけでなく部数にあって、私たちはたまたま一つだけの宇宙を観測しているにすぎない、と考えることもできます。
276 この宇宙はたまたま人間に都合よくできている
自然界の基本法則には、宇宙に人間=知的生命体が生まれるよう絶妙に調節されているように見えるものが少なく ありません。その理由を「知的生命体が生まれないような宇宙には、それを観測するものもいない。そのように絶妙に調整 されている宇宙しか観測されないのだ」と考える。絶妙な調整され具合を「不思議だ」と考えるのではなく、むしろ 「当たり前」とするのが人間原理です。
これが間違いなく当てはまるのは、太陽と地球の距離に関してです。地球は太陽から1500億メートル離れています。 これが10億メートルや10兆メートルでない理由は明白でしょう。もし地球がそんな距離にあったら、人類どころか生命の 誕生する気候にはなりません。水が凍っても、水蒸気になっても生命の源である海は作られない。ちょうどよい気候になる 絶妙の位置だったから、私たちはこの惑星に生まれ、太陽との距離も測ることができるようになるわけです。
しかし、仮にこの太陽系に「ちょうどよい距離」の惑星がなく、そのため人類が生まれてなかったとしても、太陽系の 他の、恒星のまわりを公転するする惑星には人類のような知的生命体が生まれたかもしれません。実際、ここ十数年のあいだに 数多くの太陽系外惑星が発見されており、最近では「ちょうどよい距離にある」、地球に似た多くの惑星も見つかっています。 宇宙のどこかに知性をもつ「人びと」がいれば、かれらによって宇宙は観測されるでしょう。
◇◇◇
地球が人類という知的生命体が生まれるために絶妙に調整された例としてよく挙げられるには次のものもある。
・ 太陽: 地球は太陽から1500万キロ。 太陽は発電所。ちょうどよい量のエネルギーをもらう。 凍りつかない。
・ 月の直径は、地球の 1/4。地球の潮の干満。地球の軌道が安定する。
・ 地球の回転軸 23・4度傾斜。 季節のサイクル。変化に富む気候がもたらされる。
・ 地球の自転速度: 遅ければ、昼が長く焦げ付く、高温、夜は低温。速ければ、暴風が吹き荒れる、
・ 地球の防護壁 ① 磁場:太陽風、太陽フレア、コロナで起きる爆発の影響を防ぐ。② 大気: 熱を逃がさない毛布。 紫外線を防ぐ。流星を燃やす。
そうか、これらは太陽系ができたときの初期条件によってたまたまそうなっているのだ。「神様」に頼らずに説明しようというのが、 人間原理だ。
大栗さんは、他に「電磁力の強さ」「陽子と電子の質量比」「重力の強さ」「暗黒エネルギーの量」「空間の次元」 が、私たちの宇宙とは大きく異なる宇宙もたくさん生まれている可能性もあるという(マルチバース仮説)。
大栗さんの主張でおもしろいのは、「原理的に観測できないものは存在しない」というものの見方である。
知的生命体が存在しなければ、地球も太陽系も宇宙も(観測できなく)存在しないのだ。
そうか、これらは46億年前、太陽系ができたときの初期条件によってたまたまそうなったのか、40億年前に地球に たまたま生命が誕生し、それから多くの時がながれ今日たまたま大栗さんの本を読む。超弦理論、量子理論、相対性原理。 何回読んでも分からない。知的生命体といってもピンキリなのだなあ。
つづく