今日は、サービス残業の残業代請求についての裁判例を紹介しています(つづき)。
第三 争点に対する判断
1 争点(1)(ア)(休日の取得)について
 証拠(略)によれば、平成一四年六月三〇日には、原告が管理人業務であるお茶機の水替えとエアフィルターの清掃等を実施し、同年九月二一日は、当初休日を取得する予定であったが、同月三日、Eからこれを中止するように申入れを受けて、それぞれ勤務したほか、いずれの日にも原告が休日を取得したことはなく、BS名古屋ビルでの業務に従事し、代務員は派遣されなかったことが認められる。なお、証拠(略)によれば、平成一三年一一月二三日ないし二五日は、原告は引越作業に従事し、その後の二六、二七日に被告社員Fらから管理人業務について研修を受け、原告も二八日から独り立ちして勤務するようになったと日誌に記載していることが認められるが、他方、証拠(略)によれば、一一月二二、二三日にも、管理人業務の講習や現場での説明を受けており、一一月二三日ないし二五日はBS名古屋の休業日であることが認められるから、これらの点は、上記判断を左右するものではない。
2 同(イ)(所定の時間外業務等の内容と本件不活動時間の労働時間性)について
(1)認定事実
 後掲証拠に、証拠(略)及び原告本人並びに弁論の全趣旨を併せると、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はなく、これに反する原告・被告双方の主張は採用できない。なお、認定事実の後に【】書きで事実認定の補足説明を付記する。
(ア)被告は、原告の勤務時間の設定及び業務指示について、雇用契約書上の勤務時間が午前九時から午後六時までであるのに対し、実際の勤務時間は、本件委託契約の内容に従って午前八時三〇分から午後五時三〇分までと指示した。なお、休憩時間はいずれも午前一二時から午後一時までと午前・午後各一五分である。また、残業は、契約書では「有」としたのに対し、口頭の説明では「無」と説明した。これらについての被告担当者Cの考えは、勤務時間について、一日の労働時間数が七時間三〇分であることさえ明らかであれば問題がなく、残業につき、所定の時間外業務に対する賃金は所定内賃金に含まれているというものであった。さらに、被告は、原告に対し、日曜・祝日に勤務しても休日を取得したとし、平日の一部に午後九時ないし九時三〇分まで残業を行ったとするタイムカード、出勤簿及び過勤届を提出するように指示した(書証略)
(イ)営業日における所定の時間外業務等、決まって従事した業務について、被告は原告に対し、本件雇用契約時に、原則として「ブリヂストン名古屋ビル管理人勤務表」(書証(略)の印字部分)のとおり実施するよう指示し、その後、平成一五年九月一日以降の業務につき一部を変更した(書証(略)、原告本人一九頁)。ただし、実際にはこれと異なる運用をしていた場合がある。また、本件委託契約上、原告は制服を着用してこれらの業務を行うものとされていた(書証略)。
 上記業務の内容及び実施時間帯は次のとおりである。
(平成一五年八月三一日まで)
六:〇〇 通用口の解錠に五分(書証略)
七:三〇 玄関及び駐車場シャッターの開放・ショーウインドー蛍光灯の点灯等に五分
玄関及び駐車場シャッターの開放後、朝刊を三階まで運ぶ作業に二、三分(書証(略)の手書き部分)
玄関・駐車場の清掃、ゴミのチェック・仕分け・搬出を含む館内巡回に四五分
【被告は、清掃が原告の妻である管理補助員の業務であり、原告の業務でないと主張するが、書証(略)の七:三〇欄の印字部分に「館内巡回(玄関、駐車場拾い掃き清掃他)」と明記されているほか、本件委託契約でも清掃の確認・一般廃棄物の集積場所への搬出は管理人である原告の業務とされていること(書証略)や、仮に妻の業務であるとすると所定労働時間外の業務となるが(書証略)、これに対応する時間外割増賃金(残業代)は支払われていないこと(書証略)に照らし採用できない。
 他方、原告は、これらの業務を午前六時ないし七時から実施したなどと主張するが、書証(略)にはおおむね上記のように記載され、手書きで訂正もされていない上、原告は、営業日である平成一四年六月一〇日ないし一二日午前七時に駐車場シャッターを開放したことを突発的に発生した業務と認識していること(書証略)、五階から二階までの館内巡回と玄関・駐車場の清掃などを別の時間帯に行わなければならない必要があるとはいい難いことから採用できない】
八:三〇 通常業務である小荷物の発着処理及び整理開始
その他、休憩を挟んで午後五時三〇分までの間に、巡回三〇分一回、五階お茶汲み機の点検・給水一五分が毎日、その他、蛍光灯の取り替えや階段の滑り止めなどの簡易な補修等を随時、エアフィルターの清掃が月に一回、BS名古屋の指示による消耗品の管理が週に一回
【原告は、午前八時から、荷物が届き始め、小荷物の発着処理及び整理業務に従事すると主張し、原告本人はその旨供述する(書証略)が、書証(略)には上記のように記載され、手書きで訂正もされていないから、採用できない】
一八:三〇 玄関シャッター閉鎖に五分
【被告は玄関シャッター閉鎖を午後六時に行ったと主張するが、書証(略)に照らし採用できない。
 他方、原告は、所定労働時間内にできなかった荷物の伝票整理とノートへの記入に毎日三〇分を要したと主張するが、以下のとおり採用できない。
 まず、毎日従事した業務に要する時間は、巡回が一回で三〇分、荷物の発送が一回に二、三〇分かかるとして(原告本人四五頁)、ほとんどの日は二、三回である(書証略)から六〇分程度、着荷が、通常は一〇回余りで(書証略)六〇分程度(原告本人四七頁)、お茶汲み機の点検・給水等に一五分である。その他、BS名古屋の指示による消耗品の管理に週に一回三〇分程度(原告本人四四頁)、蛍光灯等の交換に四か月で二一回、合計八〇〇分程度(書証(略)、原告本人四二、四三頁)、エアフィルターの清掃が月に一回であり、さらに、安全点検等の業務が月に数回あり(書証略)、その他にも何らかの業務に従事した可能性があるとしても、所定時間内に荷物の伝票整理とノートへの記入をする余裕がなかったとは認めがたい】
二〇:〇〇 駐車場シャッターの閉鎖・ショーウインドー蛍光灯の消灯に五分
【原告は駐車場シャッターの閉鎖を午後九時に行っていたと主張し、原告本人がその旨供述する(書証略)とともに、書証(略)の手書き部分にその旨の記載がある。しかし、原告は営業日である平成一四年五月二二日午後八時三〇分まで駐車場シャッターを開放していたことを突発的に発生した業務と認識していること(書証略)から採用できない。他方、
被告は、平成一五年七月一日以降これらを最終巡回時に行うこととしたと主張するが、書証(略)の日付が同年八月となっていることに照らし採用できない】
二二:〇〇 最終館内巡回に三〇分
(平成一五年九月一日以降)
七:三〇 (平成一五年八月三一日まで)と同じ
八:三〇 (平成一五年八月三一日まで)と同じ
一八:三〇 (平成一五年八月三一日まで)と同じ
二二:〇〇 駐車場シャッターの閉鎖・ショーウインドー蛍光灯の消灯に五分。
最終館内巡回に三〇分
【原告は、駐車場シャッターの閉鎖・ショーウインドー蛍光灯の消灯を午後九時に行ったと主張するが、書証(略)に照らし採用できない】
(ウ)休業日における所定の時間外業務等、決まって従事した業務について、被告は原告に対し、午前七時三〇分に通用口の解錠を午後六時に同施錠を実施するように指示した(書証(略)の「■」部分)。
【原告は、書証(略)の「■は休日実施事項」との記載は、営業日と異なる時間帯に行うものだけを示す記載であると指摘するが、書証(略)によれば、本件委託契約において、管理人及び管理補助員が休業日に業務を行うことは予定されず、すべて代務員が行うものとし、しかも代務員も通常の管理人業務は行わないものとされていたから、原告に対し指示されたのは、「■」で特定された通用口の解錠と施錠のみであると解するのが相当である。なお、休業日に最終巡回を指示されたかについて付言するに、上記の他、原告は、休業日である平成一四年三月二一日及び平成一五年四月二七日の最終巡回の時間帯に外出しており(書証(略)、別紙(略))、また、原告が作成した残業時間及び勤務時間の記録(書証略)によると、休業日には勤務時間を午後一〇時までと記載していることが認められることに照らしても、原告がその主張するような時間帯に最終巡回を行っていたことは認めがたい】
(エ)本件不活動時間における業務について
 本件委託契約上、被告はBSに対し、管理人をして、営業日の午後一〇時までの間、火気・電灯・戸締まり等の確認、冷暖房機・換気扇・空気清浄機・事務機器の電源等設備関係の確認をさせ、かつ、火災等の早期発見と不測の事故に対する臨機応変の処置並びに関係者への連絡、その他館内規則を遵守して事故のないよう業務の維持に務めさせる義務を負う(書証略)。そして、被告は、原告に対し、これと同趣旨の業務を義務づけるとともに、原告の勤務態勢につき、それは原則として所定労働時間及び所定の時間外業務であり、それ以外の時間には随時食事や入浴ができると明記したものの、他方、住込勤務であるとし、緊急の場合は所要の業務を行うよう指示し、所定労働時間及び所定の時間外業務以外の時間において自由に外出できることやBS名古屋社員の指示に従う必要がないことの明示はなかった(書証略)。
 本件不活動時間中の業務実態は次のようなものであった。
 管理員居室には、火災報知盤や通用口のインターホンが設置されていたため、仮に、警報や呼出があれば、原告としては対応せざるを得ない状況にあった。なお、火災報知盤の警報が鳴ったことはなかったものの、平成一五年一二月一八日ころに二、三日にわたり夜間に不審者が通用口の南京錠をいじっていたことがあった。また、営業日にはBS名古屋社員が残業することが多く、原告が、忘れ物を取りに来た社員やインターホンの呼出に応対したり、社員の求めに応じて駐車場シャッターの開閉をしたことがあった。
 平成一五年九月一日以降については、駐車場シャッターの閉鎖を午後一〇時としたことにより、営業日の夜間に駐車場シャッターの開閉を求められることは少なくなったが、午後九時から一〇時ころまでの間にインターホンが鳴ることは時々あった。また、平成一五年八月ころ、原告が所属する労働組合と被告との団体交渉で、BS名古屋社員が午後五時三〇分以降も原告に用事を頼み対応しなければならないことが問題となり、午後五時三〇分以降「業務終了」と記載した札を管理室ドアに掲げることで合意し、被告はそのBS名古屋側の了解を取り付けた。
(書証略)
【被告は、平成一五年八月三一日までの期間において、朝六時に通用口を開錠すればBS名古屋社員の出入りに対応する必要がなくなると指摘するが、インターホンで呼び出されれば応答する必要があるし、通常社員が出入りしないような時間帯であれば誰が入ったのか確認する必要があり、また、駐車場シャッターの開閉は必要である。夜にも、退社する社員は自ら駐車場シャッターを操作して出ることができたが、入ろうとする場合には上記と同様である】
(オ)原告ら夫婦の外出について
 原告ら夫婦は、別紙三(1)ないし(3)(略)の「具体的行動」欄記載のとおりBS名古屋から外出した。
【被告は原告が否認するものを含めて別紙三(1)~(3)(略)の行動記録欄記載の全てが原告の外出であると主張するが、それを裏付ける的確な証拠はない】
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