今回は、サービス残業の残業代請求に係る裁判例を紹介しています(つづき)。
(b)本件不活動時間における業務について
 原告は、本件不活動時間においても、BS名古屋ビル内に待機して種々の事態に対応することが義務づけられていた。すなわち、管理員居室に火災報知盤や通用口のインターホンが設置されていたため、食事中や入浴中であってもこれに対応せざるを得ないほか、被告から書面等で管理人として警戒と緊急時の対応が指示されていた。現にBS名古屋社員が時間外に出入りすれば、ビル管理上、不審者の確認などが必要になる。また、代務員が派遣される公休日にも、午前八時三〇分と午後五時三〇分に引継を義務づけられていること、代務員に館内巡回や工事業者や出勤社員への対応が義務づけられていること、原告が外泊する場合には宿直代務員が派遣されたことから、上記義務の存在が裏付けられる。
(c)原告の外出について
 原告の外出は、前記のものに止まり、その他は妻などの外出を記載したものである。原告は自由に外出していたわけでなく,人が生活する上で必要な場合に限られ、かつ、これは被告が代務員を派遣せず、所定の休日が取得できないことからやむを得ず行ったこと、その場合も妻である管理補助員を残すようにしたこと、二人とも外出する場合は出勤しているBS名古屋社員に留守を頼んでいたことから、これによって原告がBS名古屋ビルに待機する義務を負っていたことを否定すべきではない。
(d)被告の勤務時間の設定及び業務指示の不明瞭・不合理について
 被告は、所定の時間外業務について残業として扱わないほか、原告が恒常的に時間外及び休日労働を行っていることを認識した上で、被告が指定した一部の時間のみを労働時間と記載したタイムカード、出勤簿及び過勤届を提出するように指示した。また、所定労働時間について異なる書面を作成するなど、被告の勤務時間の設定及び業務指示は不明瞭・不合理であるから、被告の設定した時間や指示以外の業務の処理に要した時間が労働時間でないと判断することは不当である。 
(被告の主張)
 本件不活動時間は、被告の指揮命令下に置かれたものとはいえず、労働時間には該当しない。このことは以下の点から明らかである。
(a)所定の時間外業務等、決まって時間外に従事した業務について
 原告が従事した所定の時間外業務は、営業日につき別紙四(2)(略)のとおりであり、BS名古屋の休業日につき、午前八時の通用口南京錠解錠及び午後六時の同施錠の合わせて一〇分だけである。被告は原告に対し書面(書証略)に従って業務を行うよう指示したものであり、書証(略)以外の書面を渡したことはなく、これ以外に業務を指示したことはない。BS名古屋の営業日につき、午前六時に通用口南京錠を解錠したというのも、被告が午前六時四〇分に行うよう指示したものを原告が自らの判断で行ったに過ぎない。これによれば、原告は、次の業務までの間、少なくとも三〇分以上労働からの解放が保障されており、この間は労働時間ではない。
 別紙四(1)(略)で原告が主張するもののうち清掃作業については、被告が原告とは別に雇用して賃金を支払った妻の業務であるから、これが原告の労働時間になることはない。
 荷物の到着は所定労働時間の午前八時三〇分以降であり、これ以前に対応する必要はなかった。
 荷物の伝票を整理し大学ノートに記入する業務は所定労働時間内に行うよう指示しており、また、通常業務にBS名古屋社員から指示される仕事を含めても所定労働時間にはむしろ十分な余裕があり、時間外に行う必要はなかった。なお、BS名古屋社員からの指示が被告からの指示と同視されるものではない。
(b)本件不活動時間における業務について
 被告は、原告に所定労働時間及び所定の時間外業務以外に何らかの業務や対応を指示したことはない。火災等への対応は、原告がBS名古屋ビルに所在する際に対応することを求めたに過ぎず、原告を場所的に拘束するものではない。そして、火災等が発生したことは一度もなかった(原告五一頁)から、実質的に見て上記対応が義務づけられていないといえる。また、BS名古屋の社員の出入りに伴って原告が対応を要するのは、通用口等の解錠前及び施錠後のいずれも入りだけであり、そのような例はほとんどなかった。さらに、食事や入浴時間までもが労働時間となることはあり得ない。
(c)原告の外出について
 原告は、その自認するものに止まらず、別紙三(1)~(3)(略)の「行動記録」欄記載のとおり被告の承諾を得ないまま外出し、被告も原告の外出を把握し制限しようとしたことはないのであって、本件不活動時間においてBS名古屋ビルへの待機や何らかの対応をすることを義務づけたものではない。
(2)争点(2)(一部弁済の有無)について
(被告の主張)
 前記2(8)の支払は、被告が原告に対し相当と考える未払割増賃金(残業代)の額を提示し、これを支払ったものである。
(原告の主張)
 前記2(8)の支払は、原告ら夫婦の雇用契約上の労働者たる地位と管理員居室の使用関係に関する紛争に関する和解金として支払われたものであり、未払賃金の一部として支払われたものではない。
(3)争点(3)(賃確法六条一項の適用の可否)について
(被告の主張)
 本件で、原告の請求の一部が認められたとしても、それは極めて微妙な判断によるもので、被告がこれを争うことに合理的な理由がないとはいえないから、賃確法六条二項、同法施行規則六条四号に該当し、賃確法六条一項の適用はない。
(4)争点(4)(付加金支払義務の有無)について
(被告の主張)
 本件で、原告の請求の一部が認められたとしても、それは極めて微妙な判断によるもので、被告に悪質性はないから、付加金の支払を命じることは相当ではない。
なお、企業の担当者で、残業代請求についてご相談があれば、顧問弁護士にご確認ください。顧問弁護士を検討中の企業の方は、弁護士によって顧問弁護士料やサービス内容が異なりますので、よく比較することをお勧めします。そのほか、個人の方で、不当解雇保険会社との交通事故の示談・慰謝料の交渉オフィスや店舗の敷金返還請求(原状回復義務)多重債務(借金)の返済遺言・相続の問題刑事事件などでお困りの方は、弁護士にご相談ください。