がんへの医療大麻の活用 医療大麻は様々な難病に活用が試みられていますが日本人の死因の3割を占めるがんに対しても一日も早い活用が期待されています。米国などでは統合医療の枠組みで医療大麻が臨床応用されています。統合医療とは医薬品や手術、放射線を武器にする現代医療とそれ以外の補完・代替療法のいずれをも視野に入れ患者中心の医療を提供するものです。具体的には抗がん剤の治療を受けながら医療大麻を活用して心身の消耗を防ぎQOLを保つようなスタイルです。つまりサポーティブ・ケア(支持療法)として大麻を活用するのです。がんで最も恐れられているのは疼痛ですが大麻は中枢制の鎮痛効果や疼痛緩和効果をもたらします。またがん患者は悪疫質(タンパク質の減少を伴う体重の低下)となって気力や体力を奪われます。大麻には食欲を回復する効果があります。また化学療法剤は副作用として吐き気や嘔吐を伴いますが大麻は制吐作用により吐き気を抑えます。なお最近では大麻の血管新生阻害やアポトーシス誘導などの作用が報告され、直接的な抗がん作用にも注目が集まっています。
モルヒネと大麻 米国ではモルヒネなどオピオイド系鎮痛剤の過剰投与による死亡が増加して社会問題になっています。これはがん以外の慢性疼痛に対するオピオイド系鎮痛剤の投与が増えていることも要因です。モルヒネは延髄にある呼吸中枢を抑制して呼吸低下を招く作用があります。これに対して大麻は延髄の呼吸中枢に作用しないため安全性が高いといえます。実際に米国で医療大麻の使用が許可された州ではオピオイド系鎮痛剤の過剰投与による死亡者数が減少していることが報告されています。また医療大麻とオピオイド系鎮痛剤を併用すると鎮痛効果が増強し、副作用の軽減に有効であるという研究結果も報告されています。日本でがん治療に携わる医師に医療大麻に関するコメントを求めると「モルヒネが使えるのであえて大麻が必要だとは思わない」といった声をよく耳にします。たしかに日本ではモルヒネ製剤の管理が厳格に行われているので乱用や過剰投与のリスクは少ないのですが大麻にはモルヒネにはない利点があることを知っていただきたいと思います。 →続く