「生きて帰れるかわかりません」
「この数日で何があるかわからないので、個室に移します」
妹と二人で聞いた病状説明で、
医師に言われた言葉だ。
意識があったことや少し話ができたことで、
どこかで「一命を取り留めた」と
安心していたけれど、
生死の境
にいる状態なのだと改めて思い知る。
わかっている。
医師は最悪の状態を見越しての説明をする。
私は長く病院の相談員として働いていたこともあり、
その場面は何度も見てきた。
説明後、看護師さんにかけられる言葉さえ想像がつく。
説明を聞いて、妹は泣いていた。
当たり前だ。
「ここ数日で亡くなるかも」
と言われたのだ。
私は比較的落ち着いていたように思う。
いや、
長女として
妹の前で、落ち着いていようと必死だったのかもしれない。
頭の中では、
「まだ母を送る準備はできていない」
「ちょっと待って」
「まだ早い」
という焦りや不安
「そうは言っても、大丈夫よね」
「先生って大袈裟に話すもんね」
という現実逃避
「生きて帰ってきて」
という願い
たくさんの言葉が頭の中をグルグルしていた。
家族は、医者のように治療することはできない。
できるのは
ただ祈ること。
そして
これからの母が帰ってくることを信じて、
できることを淡々とやっていくこと。
まずは介護保険の申請。
とても些細なことだし、もしかすると
それさえも現実逃避なのかもしれない。
それでも
私は
母が生きて帰ってくる未来を
信じたかった。
