最近の母は、料理や戸締まりはもちろん、掃除まで始めている。
今朝は私がのんびり起きてきたせいで、脚立に上って神棚のお水を替えていた。
さすがに「脚立はやめて」とお願いした。
ちゃんと早起きしよう。
そんなふうに、母は今日もマイペースに過ごしている。
倒れていたことも、救急車で運ばれたことも、その後の治療のことも、母はまったく覚えていないそうだ。
でも私は覚えている。
あの日は、怖くて怖くてたまらなかった。
あの日も、いつものように母へ電話をした。
ほぼ毎日の安否確認の電話。
でも、何度かけても出ない。
嫌な胸騒ぎがした。
遠方に住む妹へ連絡し、実家の近くに住む親戚に様子を見に行ってもらうようお願いした。私は急いで実家へ帰る準備を始める。
落ち着かず、悪いことしか考えられない私に代わって、妹が警察へ連絡してくれた。
警察と親戚、そして妹の幼なじみが、ほぼ同じタイミングで実家に到着した。
鍵は開かず、警察が窓ガラスを割って家の中へ入ることになった。
その様子を妹の幼なじみが妹へ電話で伝え、その内容がさらに妹から私へ届く。
まるで現場にいるようで、でも何もできない。
しばらくして警察から電話が入った。
「倒れていて起き上がれません。意識はあります。これから救急車を呼びます。」
その言葉を聞いて少しだけ安心したのを覚えている。
お願いして、私も病院へ向かった。
救急車には親戚が同乗してくれた。
私は高速バスで病院へ向かいながら、頭の中がぐるぐるしていた。
「このまま亡くなってしまったらどうしよう。」
「いや、大丈夫。」
「でも……。」
そんなことばかり考えていた。
救急病院に到着し、母と対面した。
母は私の顔を見ると安心したように名前を呼び、「なんでこうなったかわからない」と何度も繰り返していた。
その言葉が、今でも耳に残っている。
入院の手続きを終え、実家へ戻ったのは午前3時ごろ。
母の寝室の窓ガラスは割られたままで、床にはガラスの破片が飛び散っていた。
その光景を見て、ようやく現実なんだと実感した。
あの日の備忘録。続きはまた。