現在NHKBSプレミアムで日曜日に放映中の韓国時代劇ドラマ「奇皇后」を一足早く見終わった。
見逃した回を見たくて、ネット上で探して見たのが運のつき、ネット上には全部の回(51話)のドラマがアップされていて(前半は日本語字幕、後半は英語字幕になったが)、面白さのあまり、とうとう最終回まで見てしまった。
舞台は1300年代のモンゴル帝国の元、朝鮮半島の高麗、モンゴル高原などで、ひとりの朝鮮半島・高麗の貧民出身の女性が、いろいろあって、高麗の王(一時地位を追われたりするが)と元の皇太子(後に皇帝)の二人に愛され、元の皇后にまでなるのが中心ストーリーの波瀾万丈、アクションも満載の歴史スペクタクルドラマである。
高麗の貧しい出の女性が元の皇帝の皇后になったというのは史実らしい。
1300年代の東アジア大陸の有り様....元により属国となった高麗が搾取され、女性が貢ぎ物として差し出される様や、元の統治のやり方の詳細、元が飢饉や放漫政治により弱体化し、やがて反乱軍により追い込まれていく所までが背景として描かれていて、中国・朝鮮のその時代の有り様がとても興味深く伺えて、楽しめた。
奇皇后が実は、弓を射る武術の達人であったり、元の辺境で騒動を起こす遊牧民族の首領が実は男装した美人の女性だったりというのは、もちろんフィクションであろう。
この奇皇后、ドラマの中で、片手を元の皇帝に、もうひとつの手を高麗の国王に握られて困惑するというシーンが出て来るが、こういったうらやましいシュチュエーションは世の女性のかなりの部分の夢なのではないだろうか。
もうひとつ、怖くなったのが女性の嫉妬。
元の王宮における、皇帝の愛を独占し、やがては権力をも手に入れる女性(後の奇皇后)に対する、皇后や皇太后などの間の嫉妬の凄さが恐ろしい。
陰謀、毒の混入、邪魔者の殺害など何でもありである。
美人の女性達の微笑みに隠れた凍り付くような恐ろしさ.....女性が怖くなりそう...
このドラマを見ていると、歴史を動かしているのは、富とそれに至る権力を求める権力欲、名誉欲、リーダーの領土拡張欲、そして時に理知に基づく少しはまともな改革への動きであり、これらがせめぎ合い、その時々の権力闘争の勝者が敗者を殺害あるいは流刑にし、勝者がリーダーとなり、交代が繰り返されていくものと思われた。
日本も明治の頃までは、そうであったのではないか。
ドラマを見終わって、史実はどうなっているかと、改めて子どもの本棚にあった世界史の高校教科書をひもといてみた。
ドラマの時代については、「中国でも、放漫財政や内紛で元の統治がゆらいだ。
交鈔(元の紙幣)の乱発や専売制度の強化が飢饉とあいまって民衆を苦しめ、紅巾の乱をはじめとして各地に反乱がおこり、元は明軍に大都(元の首都、今の北京)をうばわれてモンゴル高原にしりぞいた(1368年)」とあった。
ドラマ「奇皇后」でも、偽金の紙幣の氾濫や、塩などの専売制度や特定商人による利益の独占、飢饉による民衆の飢えが描かれている。
史実同様、ドラマは奇皇后が若い息子の皇帝と共に、北へ(モンゴル高原へ)逃れるところで終わる。
世界史の面白さは、教科書の1行~数行の記述の中に、実は人々の壮大なドラマ(愛と欲望と権力闘争等等)が隠れているということだと思う。
ドラマ「奇皇后」は中国・朝鮮半島、東アジアの歴史への興味をかきたててくれた。
アジアに限らず、世界史の教科書を改めて読み通してみたくなった。