昨7月15日の衆議院特別委員会で安全保障関係法案が自民・公明両党により強行採決され可決された。
政府・与党(自民・公明)の提出している安全保障関係法案は、憲法第9条違反の恐れが高く、憲法審査会に招かれた著名な憲法学者3氏も、憲法学会会員の大多数も、内閣法制局の元長官達も、最高裁判所の元判事も、そろって違憲あるいは違憲の疑いが高いと意見表明しているしろものである。
さらに、法案における歯止めが曖昧であり、時の政府の裁量にまかされている部分が大きいため、自衛隊が日本の周辺を超えて世界中で戦火に巻き込まれる危険性が増大する。
また、日本が戦地で後方支援する国の敵対国からは当然敵国とみなされ、国内外での日本人へのテロ、日本国内での原発、新幹線、人口密集地でのテロに繋がる可能性は充分ありうる。
また、米艦防護のためということで他国と戦闘を始めれば、まぎれもなく日本国内の米軍基地や自衛隊基地とその周辺地域、日本の主要都市へのミサイル攻撃を、最悪の場合は核攻撃を受ける危険を格段と高めることになる。
抑止力というが、ミサイル防衛システムなどそれほど精度の高いものではない。
打ち合いになったら、甚大な被害は必須である。
最終的に勝者となっても、死屍累々の上でどんな意味があるのか?
こういった問題点に不安を感じているからであろう、最近の世論調査で安保法案の今国会での成立に反対する人が賛成する人の2.4倍にのぼっている(7月13日NHK世論調査ニュース。今国会成立に賛成18%、反対44%)。
議論が尽くされたか、という点でも、尽くされていないという人が過半数を超え(尽くされた 8%、尽くされていない 56%)、与党支持者の中でも議論が尽くされていないという人が3倍にのぼる。
閣僚の石破大臣をはじめ、とうとう安倍首相も国民の理解が進んでいるとは言えないと認めるにいたっている。
こういった世論の理解も進まず、今国会での成立に反対の世論が圧倒的な状況でも何故今国会成立に突き進もうとするのか?
朝日新聞やNHKの報ずるとこでは、今年の春に安倍首相が米国議会で安保法制の成立に言及したため、成立させないと党内の求心力が失われてしまうことを危惧しているからだという。
私の解釈では、今の与党で衆議院の2/3を占められるという圧倒的優勢は、民主党の党内紛糾による自滅や当面の株価上昇等いろんな要素が偶発的に重なってできている状況であり、この絶好の機を逃すと、安倍さんの野望であるが危険きわまりない安保法案採決を強行できる機会は将来的にとても難しいと踏んでいるからだと思う。
そもそも自民・公明は安保法案の詳細を提示して国民の負託を受けた訳ではない。
安保法案のことは公約にさらりと述べていただけで、自民公明を支持した有権者はアベノミクスによる景気浮揚に期待して自民公明に投じたのであろうし、そもそも前回の衆議院選挙の解散の名目は「消費税増税延期を問う」であった。
衆議院議員はもちろん、参議院議員も、国民主権の民主主義国家である「はず」の日本において、国会議員であるなら、単なる執行部の将棋の駒ではなく、主権者の国民が訴えていることを受け止め、「皆で渡れば怖く無い」と与党内の流れに押し流されるのではなく、自分の行なおうとしていることが議員の本分にもとらないか、よくよく考え、はっきり意見表明し議決参加の是非を決すべきと思う。
堂々と「これはおかしい」という議員が、自民党の村上誠一郎氏だけなのはどうしたことか?
威勢のいい小泉進次郎氏は? ハト派と目される河野太朗氏は?
今、反旗をひるがえせば、党内では干されるだろうが、長い目で見れば政治家としての評価・成長は格段と高まるのではないか。
黙して国民の意思を無視する行為に加担すれば、将棋の駒議員であり、将来的にも国民の信頼は得られないのではないか。
また、有権者の側に立つなら、守るべき立場にありながら憲法を無視し、国民の多数の意見、与党支持者の意見すら無視し、日本の今後 ----再び戦争での戦死者を出す国になるのか専守防衛の平和外交国家か--- の歴史的な転換点となりうる行為(石川健治東大教授は憲法9条についての政府見解変更を法学的にはクーデターであると言及しているが的を得ていると思う)を将棋の駒として従うような国会議員を選んでいるのは自分達有権者であるということをしっかりと自覚する必要がある。
今国会で安保関係法案に賛成した国会議員の名前を記憶に刻み、これからの日本の国政選挙において、棄権などすることなく、厳しく断罪することが、日本をもう少しマシな民主主義国家にしていく上でとても大切なことであると思う。