NHKで放映されていた『岸辺露伴は動かない』の映画版、

岸辺露伴ルーヴルへ行く』を眺めるともなく観る。

 

漫画家の岸辺露伴は、読者に

「この世で最も『黒い色』という色を見たことがあるだろうか?」と問いかけ、

自分のその問いに関する体験と、そこまでのいきさつを語る。

発端は10年前まで遡る。当時17歳の露伴は漫画家デビューを目指しており、

投稿用の原稿を執筆するため、祖母の経営する元旅館アパートに夏休みの2か月間移住する。

そこで入居者の女性・藤倉奈々瀬から、この世で最も黒く、最も邪悪な絵の存在を聞かされる。

その絵はかつて彼女の地元の地主が所有しており、彼女自身も遠目で見たことがあったが、

買い取られて今はルーヴル美術館にあるという。

奈々瀬は後に失踪したうえ、露伴もデビュー後は仕事に夢中になり、

絵と奈々瀬のことはいつしか忘れていた。

10年後、27歳となった露伴は億泰らとの世間話をきっかけに絵と奈々瀬のことを思い出して

好奇心と青春の慕情に駆られ、絵を見るためにルーヴル美術館を訪れる。

(wikiあらすじより)

 

 

微妙。というか、

ルーヴルネタっていうことで、いやな予感はした。チャチにされそうで。

“この世で最も黒く、邪悪な絵”の謎を追い、美の殿堂ルーヴルへ”

なんていう副題がついてるけど、

露伴のキャラクターのカッコよさ(ただし高橋一生のカッコよさとイコールではない)に

おぶさってしまっていて、話のバランスも悪ければ必然性も説明しきれていない。

 

ルーヴルに行ったことのある人は山ほどいるだろうに、

目玉の美術品を追ってあっちゃこっちゃに向かう動線は何だ? なぜそう繋げた?

東京タワーに突然現れるゴジラのごとく「どこ通ってきたんだ?」となる。

取材や撮影を受けたルーヴル側の希望や、ロケの都合もあったのかの知れないが、

訪問したことのある人であれば、エリアがパラパラするのは気になるのではないだろうか?

 

なによりも――そう、バランスがよくない。

漫画のネタ探し⇒オークション⇒黒い絵への関わりを思い出すところまではいい。

その後のルーヴルで「???」となって、菜々瀬の過去を読む下りは「え~」である。

話自体は悪くないのだろうが、配分が良くないし、何を中心に描かれているのか混乱する。

                  ―――原作は面白いんだろうな、きっと。

 

私は荒木飛呂彦の漫画作品が好きで、その理由は主役のしがらみのなさやシンプルさだったり、

めんどくさい伏線の少なさ、いわゆる「濁り」のなさであると思っている。

いっぽうで、横溝正史や韓国映画が苦手な理由は、その場のイベントではなく、

過去から続く歴史が背景にあったり、隠し子だの親戚だのの血縁情報が急に出てきたり、

それで説明したことにして、現場での説明責任(?)を放棄していることだ。

先祖の受けた被害を伝え聞いて、彼らと会ったことのない孫が果たすのが、

理屈に合っているかどうかわからないし、伝え聞いた物を100%信じるのか?と思うし、

兄弟だと知った途端に周りを殺しまくってでもそいつを助ける、に至っては、

疑えよ、この単細胞っ と思う。

格闘系少年漫画なら多少勢いで許すかもしれないが、映画でそれをやられるのはダメだ。

 

荒木作品は格闘系少年漫画に近いのに、

韓国映画のような〇〇なんだから納得しろ、という図々しさがない。

絵としては書き込みが激しくて暑苦しいのに、キャラクターたちはクールだ。

岸辺露伴はその代表キャラだと思う。

ルーヴルへ行く、はそういうわけでイマイチな映画ではあるが、

そして、江戸時代の絵師をもっとぶっ飛んだキャラにしてしまえは良いのにと思ったが、

彼らに暑苦しく叫んだりさせなかったのだけは、まあ、よかったかな。