年越しスティーブンキングの一作『ゴールデンボーイ』

原作は読んでいたのだけど、観ていなかったので。1998年作品だそうだ。

 

潜伏するナチ戦犯と、彼に接近して話を聞くうちに、おのれの内部に巣食う邪悪さに

目覚めていく少年の姿を描いたサスペンス。

モダンホラーの巨頭スティーヴン・キングの『ゴールデンボーイ』の映画化。

古い作品だから、あらすじ全文を乗せても構わんだろう、と、思う。

 

ロサンジェルス郊外の住宅地。

スポーツ万能で成績優秀な高校生トッド・ボウデンは、

学校の授業で戦前ナチスドイツが行ったホロコーストに触れ、その実態を知りたいと

思っていた矢先、バスの中でナチス戦犯クルト・ドゥサンダーらしい人物を目撃。

しばらく後、そのトッドはいまはアーサー・デンカーと名乗るその老人を訪ねた。

あらかじめトッドはイスラエル政府発行の手配写真と指紋で彼の身元を照合し、

確信を得ていた。デンカーはかつてアウシュビッツの強制収容所で副所長をつとめて

悪名高いドゥサンダーその人だった。

普通の少年に正体をつかまれて動揺するデンカーに、トッドはこの事実を明るみに

しないかわりに、彼がナチス時代に行った残虐行為をすべて話してほしいと頼む。

はじめは拒んでいたデンカーだが、やがて毎日のように彼を訪ねてきて

むさぼるように話を求めるトッドの熱意に押されるように生気を取り戻していく。

そんな日々が続いたおかげでトッドの成績はガタ落ち、指導カウンセラーの

エド・フレンチから両親に呼び出しがかかってしまう。

ところがミーティングの当日、トッドがフレンチの部屋に入ると、デンカーの姿が。

彼はトッドの祖父と偽り、両親が離婚一歩手前の深刻な状態にあると嘘をいい、

トッドの成績が3週間後の学期末試験でオールAなら

すべて水に流すという条件をとりつけてしまう。

できるわけがない、となじるトッドにデンカーは、「猛勉強してもらう。

ふたりは地獄まで一蓮托生だ」と冷然と告げる。

デンカー宅での猛勉強の結果、トッドの成績は元どおりオールAに。

デンカーは彼に殺意を抱き始めたトッドに、ふたりの関係をすべて書いた手紙が

銀行の貸金庫にあり、自分が不測の事態で死ねばすべてが明るみになり、

トッドは一生スキャンダルを背負うことになると語った。

そんなある日、デンカーは自分の後をついてきた浮浪者のアーチーを家に招き入れ、

すきをみてナイフを突き立てる。アーチーは暴れたあげく地下室に転げ落ちたが、

デンカーは直後、心臓発作で倒れ、後始末をさせるためにトッドを呼び出す。

トッドは地下室で息を吹き返したアーチーをスコップで殴りつけてとどめをさし、

死体を埋めてすべて始末をつけてから救急車を呼んだ。

入院したデンカーを見舞ったトッドに、デンカーは例の手紙は嘘で存在しないと言い、

別れの言葉を告げる。だが運命のいたずらか、なんと隣のベッドの患者

クレイマーはアウシュビッツの生き残りで、デンカーを告発。

かくしてイスラエルの政府機関の一員のワイスコップとFBI捜査官のリッチラーが

デンカーのもとを訪れ、目覚めたデンカーに体調が回復しだい、

裁判のため連行すると告げた。折しもトッドはめでたく首席で卒業を決めた。

だがその席でフレンチがトッドの両親に祖父のことをたずねて、

父親が彼は車椅子の身だと告げたことがフレンチの不審をかった。

さらに、デンカーの正体が暴露され、不安が晴れないトッド。

ワイスコップとリッチラーの事情聴取は切り抜けたが、

そこに新聞でデンカーの写真を見て彼がトッドの祖父の代わりに来た事実を

知ったフレンチがやってきて詰問する。だが、トッドは逆に、

フレンチが成績操作の見返りに生徒に性的関係を迫ったと触れ歩くと言って脅した。

トッドは邪悪に目覚めたのだ。その頃、デンカーは病院で自殺を遂げた。優秀な生徒を残して。

(映画COMより、すべてを説明したあらすじ)

 

 

何となく原作と方向性が違うし、これだと悲劇っぽくないなあ。

原作のドゥサンダーは過去の自分を反省しているわけではないけど、

静かに隠れて暮らしたい、と思っていたみすぼらしい老人だったし、

トッドも好奇心旺盛なだけの少年で、成績をどうにかしようと必死になっているときなど、

奇妙な連帯感や達成感があって、年齢の離れた友情がこのままであればいいのに、と思う。

が、ドゥサンダーは殺人の快楽を思い出してしまい、トッドもまた、破滅する。

映画はドゥサンダーを師として、トッドが弟子のような形で巻き込まれていくが、

原作はどっちもどっちというか、むしろ主導権はトッドにあったような気がする。

でも、トッドの優秀さが、ドゥサンダーの異常さを学んでしまい……と、

原作の方が、悲劇っぽい作りになっているように思う。

 

トッド役のブラッド・レンフロの不安定さは、素晴らしかったと思う。

優秀さと、適度なふてぶてしさ、脆さ、気弱さ、ちょっとした善良さも、

どれも納得のいくキャラクターの中途半端さ不安定さは、

原作のトッドと同じなのではないかと考える。

原作ファンもひとまず納得する、良い映画だった。

 

なお、ブラッドレンフロは、20代の中頃に、麻薬の過剰摂取で死んでいる。

トッド役は、ターミネーターのエド・ファーロングでもよいかと思っていたのだが、

ファーロングもヤク中だったな。

やっぱり子役で有名になったリバーフェニックスもそうだし、

子役……狙われちゃうのかなあ。