柳家小三治師匠の訃報が・・・ | がいちのぶろぐ

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人間国宝の柳家小三治師匠が急逝された、という訃報を目にした。名人小三治、〝枕〟の小三治。とにかく抜きん出た技量の持ち主だった。

 

早くに亡くなられた小三治師匠と同世代の、ある上方の噺家さんが生前、「噺家殺すに刃物は要らぬ 小三治一席演ればよい」と、〝戯れ言〟を言っていたのを思い出した。

 

小三治師匠の演じる噺を他の噺家が聞けば、己との違いに即刻〝頓死〟してしまう。そう言って笑っておられた。これを言ったご本人も、もちろん〝並み〟の噺家ではなかった。

 

その上方の噺家さんは、小三治師匠との「二人会」を行うと決まった時に、その二人会が近付く随分前から、胃が痛んでどうにも仕方がなかったそうだ。

 

小三治師匠には「ま・く・ら」という著書がある。今さら説明も野暮だが、「枕話」とは本編の落語に入る前に、お客をその噺に引っ張り込むための「前説」のようなもの。

 

だから普通、噺家さんもそこにあまり重きを置かないものだ。時には短く終わらせたり、内容が軽くなったり、本編の噺とサラッと結びつける程度の場合も多い。

 

だが小三治師匠の「枕話」は、それ自体が無茶苦茶に面白い。いやそれ以上に、長い時もある。本編の噺にいつ入るのかと、むしろ聴衆が心配するくらい。

 

ご本人も「ま・く・ら」の中で、〝枕だけで帰っちゃおうか〟などと、枕の長いことをやや自虐めいて書いておられたように記憶する。

 

さらにご自身の歩んできた人生と、「枕話」というものに関する考えなど、こちらも師匠の噺と同様に、テンポの良い筆運びで綴ったステキな著書だ。

 

思えば小三治師匠と同世代の古今亭志ん朝師匠、立川談志師匠、上方では桂枝雀師匠、桂春蝶師匠と、次々と幽冥境を分けて行かれる。つい先日は、笑福亭仁鶴師匠も。

 

私自身も後期高齢者の入口に立っている。その上ウィズ・キャンサー、〝ガンと生きる〟状態になっている。そして先輩方が、徐々に先立ってしまわれる。

 

柳家小三治師匠。また一人、天才があの世に召されてしまった。心からご冥福をお祈りいたします。