「半径3キロの旅」を再考する | がいちのぶろぐ

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環境問題と経営の接点、中小企業の戦略やマーケティング活動,
観光・伝統産業関連などについて、「がいち」が考えたこと、思ったことを書きとめてゆきます。

同志社大学院のオープン講座「ソーシャルイノベーション研究プロジェクト」の秋学期のコースに私も参加していることを、この間、何度もブログに書いてきた。

 

そのプロジェクトで、私は「半径3キロの旅」というテーマのチームに加わっている。これは春学期に、ウィズ・コロナの状況下で、観光関連産業がどのような戦略を採りうるだろうかという問題意識から出発した。

 

その時点では「マイクロ・ツーリズム」という、いわば〝近場の旅〟が中心にならざるを得ないだろうという視点から、具体的な観光客の誘致戦略を考えようとしてきた。

 

 

 

しかし現状は「Go Toトラベル」キャンペーンなどもあって、第3波の感染拡大が言われつつも、観光地においては来客数がそれなりに回復しているという状況がある。

 

ではこの「半径3キロの旅」というコンセプトは、もはや意味を持たなくなっているのかという疑問も生じる。だけど私は、これがもはや無駄なコンセプトになったとは考えない。

 

外国人観光客は、まだまったく回復していないわけだし、国内の観光客にしても、いつ感染拡大の再来で客足が止まるかなど、誰も全く予想がつかない状況でもある。

 

そうではあるけれど、ホイジンガが言うように人間は「ホモ・ルーデンス(遊ぶ人)」だから、今までと同じとは言わないまでも、何らかの「旅という体験」は求めていると思う。

 

ならばその「旅という体験」の〝受け皿〟として、「新たな旅のあり方」を提案できるのではないかと思うのだ。それが「半径3キロの旅」というテーマの基本だと思っている。

 

そのかわり「新たな旅」である以上、これまでの旅とは〝異なった考え方〟に立つべきだ。ではそれはいったいどんな考え方なのか、ということが一番大きな課題になる。

 

この間チームで議論してきた結果として、「双方向性の旅」「不易流行を探す旅」という言葉が出て来た。

 

 

 

これまでであれば「地域の魅力の発信」とか、「観光資源の開発・育成」ということが、こうした場合の考え方の中心になりがちだったし、私もそこに力点をおいて考えてきた。

 

しかし「新たな旅」とは、旅をする人とその地域に住む人、ガイドする人と案内される人、といった〝双方向〟の関係の中で作り上げるものではないか、と考えるに至った。

 

地域の魅力とは、ここに観光スポットがあると地域が押しつけるものではなく、そこへ来た人が自分で面白さを発見できる「余白」が重要なのではないか、ということだ。

 

地域の魅力とは「見る/体験するスポット」だけでなく、それを取り巻く住民がいて、暮らしがあって、それらが一体となって作り出しているものが、その地域の魅力ではないだろうか。

 

 

(京都・島原の町歩きで見つけたレトロなカフェの入口)

 

結果として、観光に来た人がもたらす経済面での潤いだけでなく、来た人がそこに見出す地域の魅力こそが、その地域に暮らす人の〝プライド〟を高める作用があるのではないか、と思うようになってきた。

 

そうした結果を生むためには、今までのいわゆる「観光」と何が異なっているのか。それは、その地域へ来た人と暮らしている人とが「情報を共有する」という価値だと思う。

 

その地域に暮らしていれば当たり前のことであっても、来た人にとってはそれが新しいことであったり、魅力的なことであったりするかもしれない。

 

しかしずっとその地域で暮らしているだけでは、どんなことが新しい魅力的なことなのか、どんな人たちにとって大切なことなのかがわからない。

 

だからこそ、それらを情報として「共有」できたなら、それが地域にとって魅力を再発見する機会となる。

 

 

(京都・島原の町歩きで見つけたユニークな建物)

 

「半径3キロの旅」には、こうしたことを作り出す機会を提供することが含まれていなければならない。そう思うようになってきた。

 

何とも回りくどく、そして何だか当たり前のことを言っているように思う。だけど「旅」とは、本来はそうした発見に満ち溢れたものだったはずだ。

 

それがいつの間にか、ガイドブックとネット情報を現地であらためて「追認」することが、「現状での旅のあり方」になっているのではないかと思えるのだ。

 

〝他人が作った情報〟という枠組みを打ち破って、「旅をする人」が自分のために情報を「編集し直す作業」を目指す「旅」。これを提案することが「新たな旅」の創造だと思う。

 

さても七面倒くさい話をしてしまった。だが、この基本的な考え方をベースにして、「半径3キロの旅」の具体的な方法論を、展開して行きたいと思うようになっている。