国勢調査の回収率が低いらしい | がいちのぶろぐ

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今年は、5年に一度の国勢調査の年に当たっている。その回答期限が今日までということだが、ネット・ニュースによると、総務省が把握している現在までの回答率が約半数にとどまっているらしい。

 

1990年頃まではほぼ100%の回収率だったという。95年の調査で初めて0.5%ほどの未回収が出て、それ以来増え続けているということだ。

 

前回の2015年調査では86.9%まで落ち込んだが、今回はさらに下回りそうだと記されていた。2015年からはインターネットによる回答も導入されている。

 

今回はインターネット回答の目標を50%以上としていたが、現状では35.1%で、郵送回答が18%、合計が53.1%にとどまっているらしい。

 

 

 

 

従来は調査員が各家庭を回って受け取っていたから、誰もが否応なく書いて渡していたと思う。それがプライバシーの意識が高くなったので、こうした方法には抵抗が強くなった。

 

だから〝郵送可〟になり、インターネットでの回答も可能、と変化してきた。つまり調査員が各家庭を回って回収しない分、回答せずに済ます人が増えてきているのだろう。

 

これは仕方がないことだ。回答をうっかり忘れてしまったり、面倒だから書かなかったりする人も多いだろうから。

 

それにしても、昔のように仮に調査員が各家庭を回ろうとしても、夫婦ともども働いているといった、昼間は留守の家庭も増えているだろう。社会状況が大きく変わってきたのだから、国勢調査そのものの意義も変化せざるを得ない。

 

私自身も記入していて、調査項目が昔と比較すれば随分と減ったように思った。それでもこのままだと、回収率が80%に届かないかも知れない。

 

膨大なコストを掛けて行う調査だけど、悉皆(しっかい)調査(全部を対象とする)はもう困難な時代になったのだと思う。

 

それにコロナ禍の影響もあり、またワンルームマンションなども増えているから、調査票を対面で受け渡しすることもままならないだろう。そうなるといよいよ回答をしなくなる。

 

もうこうした悉皆調査の役割は、果たし終わったのではないだろうか。もちろん国の基礎調査であることは間違いないが、この先はコストパフォーマンスが悪くなる一方だと思う。

 

それとは関係なく、先日あるインターネット情報誌の記事で「ブランド価値の変化」ということが出ていた。その記事はあまり面白い指摘はなかったが、「ブランド」という言葉が与える意味の移り変わりという視点は面白かった。

 

1970年代くらいまでは、「ブランド」という概念自体がそれほど強く意識されてはいなかったと思う。その時代には、電気製品などで「メーカーもの」という表現が使われていた。

 

多くの人が知っている大企業の製品のことを指して、「メーカーもの」と呼んでいた。こうした「メーカーもの」は「品質の安定性」という点で評価が高かった。つまり「ブランド」が、製品の安全・信頼といったことを保証する役割を担っていた。

 

それがいわゆる「メーカーもの」でなくても、粗悪品であれば市場から駆逐されるようになり、「信頼性」といった意味は徐々に薄れて行った。

 

その後、「DCブランド」などという言い方で「ブランド」に対する意識の変化が起こり、そこから次には「ブランドものイコール高級品」というイメージの時代になった。

 

バブル経済の到来とともに、海外の高級ブランドの製品などが〝あこがれの存在〟となり、そうした製品の所有がシンボル化され、「記号の消費」が行われるようになっていった。

 

そんな時代を経て、この10年ほどで「ブランド価値」という考え方が、企業側にも消費者側にもすっかり浸透するとともに、「ブランド」に対する考え方にも変化が現れた。

 

その結果、初めに「ブランド」ありき、という考え方よりも、自分のライフスタイルに合わせてどの「ブランド」を選択するか、という方向に変化してきている。

 

現在は、まず自分のライフスタイルがあり、それにふさわしい製品を身の回りに揃えるようになって、結果的にそれが「ブランド」による統一感を生み出すようになっている。

 

このようにして、自分のライフスタイルと「共感」できる「ブランド」が選択される時代になって来た、ということだろう。

 

そうなれば「ブランド」が生活シーンを規定するのではなく、個人における多様性が、ある「ブランド」と「共感」し合う時に、自分にとっての「ブランド価値」を生み出しているということになった。

 

この50年の間に、こうした「ブランド」に対する消費者の意識が変わり、それが今、「共感」と言うキーワードで「ブランド」が選択される時代になったということだと思う。

 

国勢調査という大きな「ブランド」だったものが、現状ではライフスタイルに〝そぐわない〟ものへと変化してしまったから、回収率が低下しているということも言えるだろう。

 

国勢調査という「ブランド」が、〝時代の共感〟を呼ばなくなってしまった、ということだ。もはや〝お上〟から下って来る物事が、下々に威光を及ぼさない時代になったと言える。

 

今は時代と共感される「ブランド」に価値が生まれている。だから生活シーンの中で、装飾性をなるべく排した「無印良品」などが、注目を集める可能性が高くなったのだと思う。

 

 

 

「ブランド価値」というものが、それでもなお重要性を持っているのだとしたら、これからは「心に響き合う」ということが重要なポイントになるのだろう。