レトロ建築を見るという旅も | がいちのぶろぐ

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今日配信されていたインターネット情報誌「TRIP EDITOR」に、「京都に行ったら寄ってみたいレトロ建築」という記事が掲載されていた。

 

最近は昭和レトロと言われるくらいで、昭和451970)年からでも半世紀が経つのだから、現在20歳代くらいの若い人には、昭和30年代でも十分にレトロ感があるだろう。

 

私がレトロ感を感じるとすれば、やはり大正モダンと呼ばれる時代のモノ・コトということになるだろうか。竹久夢二の絵画に象徴される時期である。

 

 

 

そうなってくると、明治期に立てられた洋館建築などは、もはやレトロというより歴史的遺産ということになる。現に、群馬県の富岡製糸場は世界文化遺産になっている。

 

京都で言うなら「京町家」などの伝統的家屋も、100年以上の時を経た建物は、レトロというより歴史的価値が出て、重要文化財や登録有形文化財などになっている建物も多い。

 

だから歴史的価値といった意味も含めて、もはや明治期の洋館建築を、単に郷愁をそそるような〝レトロ〟という言葉で一括りにしてしまうことも、やや違うような気がする。

 

それはさて置いて、記事で紹介されていた京都府のレトロ建築の中で、京都市内に存在するものとしては「京都府庁旧本館」「京都文化博物館」「京都府立図書館」の3つが挙げられていた。

 

 

(京都府庁旧本館/重要文化財)

(京都文化博物館)

(京都府立図書館)

 

この記事が、もともと京都府域全体に目を向けた記事だから仕方がないのかもしれないが、思わず何とも粗雑な感がする記事だと感じてしまった。

 

たしかにここに上げられている3カ所の建物は、京都府庁旧本館は重要文化財になっているし、他の2カ所もそれぞれ由緒正しい建物であることは間違いない。

 

しかしあえて言うなら、忘れてはならない明治期の洋館建築は、他にももっと多くあるだろうと思う。

 

例えば四条大橋のたもとに立っている中華料理の老舗「東華菜館」は、ヴォーリズが設計した〝木造の洋館建築〟だし、東華菜館と四条大橋をはさんで立つ、レストラン「菊水」の建物とは好一対を成している。

 

 

(東華菜館)

 

また円山公園にある「長楽館」は、明治の煙草王・村井吉兵衛が明治末期に建てた、ロココ調を取り入れた凝ったつくりの洋館建築で、現在はレストランなどになっている。

 

 

(長楽館)

(長楽館/内部)

 

三条通りにある京都文化博物館は、旧・日本銀行京都支店だったが、それと隣り合って建っている「中京郵便局」も、旧・京都中央郵便局だった歴史を持っている。

 

 

(中京郵便局)

 

この三条通りには、文化博物館や中京郵便局だけでなく、その西に当たる烏丸通に「文椿ビル」や「みずほ銀行ビル」が、東寄りには「旧・家邊徳時計店」などもあり、三条通がかつて京都の中心だったことをうかがわせてくれる。

 

 

(みずほ銀行)

(旧・家邊徳時計店)

 

さらに〝ポツンと一軒家〟ではないけれど、町の北東部には京都大学の「旧・人文科学研究所本館」があるし、京都市動物園の東側、疏水に面して「琵琶湖疏水記念館」になっているレンガ造りの建物もある。

 

(京都大学旧・人文科学研究所本館)

(琵琶湖疏水記念館)

 

蹴上浄水場の中にも、レンガ造りの建物が残されている。このように、日本の近代化を象徴する数多くの建物が、今も何らかの形で使われながら、明治から大正当時の面影を残している。

 

 

(蹴上浄水場)

 

近代日本の歩みを知るという意味から考えても、単に〝レトロ感に溢れています〟という言葉で終わらせてはいけない、歴史の生き証人だということが言える。

 

やはり旅行や観光と関連した記事は、観光スポットへ人を誘うためのものだから、名所紹介的な内容になってしまうのも仕方ないけれど、もう少し掘り下げてくれたらなあ、と思わずにはいられない。

 

そんな感慨を持ってしまう記事だった。