こんな記事って見識を疑ってしまう | がいちのぶろぐ

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久し振りに〝支離滅裂〟な記事を目にした。昨日配信されていた「ダイヤモンド・オンライン」誌に掲載されていた記事である。

 

記事は「京都を疲弊させる外国人観光客の『舞妓さんパパラッチ』深刻事情」と題されていて、粟野仁雄氏という共同通信に20年在籍されたフリー・ジャーナリストが書いていた。

 

粟野氏は兵庫県西宮市の出身で、大阪大学を卒業されたというから、根っ子は〝関西人〟と呼んでもいいだろう。ただし記事を京都の人間が読めば、寒気がするような文章だった。

 

こうした類いの記事は全国の至る所で、様々なジャーナリストの方も書いておられることかも知れない。地元の人間からしたら、ちょっと想像できないようなミスが散見されるという点で。

 

世間でよく言われるが、〝京都の人間は底意地が悪い〟からこのブログを書いたということではない。ただ共同通信に長くおられて、著書も多数ある方が、信じられないようなミスを連発されるのもどうかと思う。

 

しかも関西人と呼んでも差し支えのない方で、ベテランというより、もう大御所という年齢のジャーナリストの方である。そんな方の文章がこれでは、ちょっと困ってしまうという気がした。

 

お節介の極みかも知れないが、以下に気になった部分をお示ししてみたい。

 

粟野氏は、「今年1月中旬、新型コロナ騒動が持ち上がる直前に京都を訪れ、現地の実情を見聞きした」と書き出しておられた。京都へ来て、きちんと取材をしたということだ。

 

京都市の門川市長が、「京都は観光都市ではない」と記者会見で爆弾発言をしたのがきっかけだったらしい。

 

確かに京都市という、少なくとも145万人の住民が生活し、観光とは無縁の仕事もしている、そんな都市であることを前提にし、「観光だけの都市ではない」という意味だったのだろう。

 

だから粟野氏も、「観光客によって住民の日常生活が脅かされるオーバーツーリズムと言われる『観光公害』」のことを、記事にしようと思われたらしい。これ自体は、最近はよく言われるようになっている。

 

そこで粟野氏は、「舞妓さんパパラッチ」のことを書こうと〝祇園〟に取材に行かれた。その部分で「河原町四条通南側の『花見小路』」と表記しておられる。

 

もうこの時点で、この記事を読むのが嫌になった。「河原町四条通南側」とはいったいどの辺りなのか。この記事を読む全ての読者が、京都のことを詳しくご存知とは限らないだろう。

 

だが、少しでも京都に詳しい方なら、「河原町四条」という言い方は、京都で場所を示す言い方であり、河原町通りと四条通が交わる辺りのことを言う、とご存知だろう。

 

だから「河原町四条通南側」とは、その「河原町四条」の南側一帯のことだということになる。大地真央さんなら、「そこに『花見小路』はあるのか、あるのんか?」とお聞きになるだろう。

 

答は簡単である。「ない!」。以上である。〝初歩的〟以前の間違いである。この時点で、共同通信に20年も在籍された大ベテラン・ジャーナリストの文章が破たんしている。

 

次に、「ビルの谷間に寺や神社、史跡などが多い京都にあって、このあたりは狭いながらも全体的に和風の街並みで魅力的なうえ、四条通の便利な立地」だという表現があった。

 

「ビルの谷間に寺や神社、史跡などが多い」ことは事実だが、この記事にも名前が出てくる「金閣寺」や「清水寺」などは、金閣寺なら〝山の麓にポツンと〟という感じだし、清水寺なら〝東山の中腹〟の、ビルなどの建設が制限された場所にある。

 

そんな中、「花見小路」で代表される「祇園南側」地区は、「狭いながらも全体的に和風の街並みで魅力的なうえ、四条通の便利な立地のため、カメラ片手の外国人が目立つ」と書いてあった。

 

この地区は、祇園祭で有名な八坂神社の門前町から出発し、京都の目抜き通りの四条通から南北に延びる「花見小路」の、四条通よりも「南側」に当たる地区だ。

 

確かにここは〝お茶屋〟が多く残り、舞妓さんや芸妓さんが行き交う街で、町並みの光景も写真映えがする「魅力的」な街である。

 

四条通から一歩曲がり込んだところにあるから「便利」だけれど、それは観光客が訪れるにも〝わかりやすい立地〟だと言いたいのだろうか。文章の説明が粗っぽいと思う。

 

さらに「鴨川沿いの四条通で舞妓や芸妓が使う小道具を取り扱う」お店の女主人に取材をされていた。「鴨川沿いの四条通?」ハア?それどこにあるの、と聞きたい。

 

四条通には鴨川に架かる〝四条大橋〟があるくらいで、鴨川と直交した通りである。それゆえに「鴨川沿いの四条通」は存在しない。『鴨川に近い四条通』ならわかる。ここも〝雑〟な表現で書かれている。

 

さらにひどいのは、「花見小路で中華料理店『紫雲翆』を営む『祇園町南側地区まちづくり協議会』」の幹事で、街づくりのキーパーソンのお店の主人の名前が出ている。

 

ちょっと待ってくれ!もしあなたが、この中華料理店へ行きたいと思って〝食べログ〟でも〝ぐるナビ〟でも、お店を検索したとしよう。いくら検索してもヒットしてこない!

 

当然である。お店の名前は正しくは「翠雲苑」という。老舗の広東料理の名店で、食べログの点数も高い。このご主人は街づくりにも苦心されて、この間「観光公害」の話では新聞にもよく名前の載る方だ。

 

その方へのインタビューを、記事では長く引用しながら、店の名前を堂々と間違っておられる。新聞記者を長くされていながら、この初歩的なミスは何だろう。余りのことに唖然としてしまった。

 

「『公道での許可のない撮影は罰金1万円申し受けます』と日本語、英語、中国語で書かれたいくつかの立札が目に留まる。『観光公害』に業を煮やした○○さん(先に書いた中華料理店のご主人)が立てたのだ」と紹介している。

 

これに続けて記事では、「公道と私道は日本人でもわかりにくい。やや広い花見小路は公道だが、脇へ入る道や並行して走る細い道は私道が多いようだ」と書いている。

 

私道なら立ち入り制限ができる。公道だから立ち入り制限ができないけれど、その代わりに「罰金」ということだ。だが待ってほしい。誰が立てようと、「罰金」は刑罰だ。民間人が許可なく公道にそんな立札を建てられるのか。

 

京都市と相談し、罰金の根拠となる法・条例を京都市が考えて、こんな内容の立札を許可しない限り、それこそ京都市の「屋外広告物条例」に反することになる。

 

そう言えば、京大生が京大キャンパスの周辺に立てていた〝名物〟の「立て看板」の撤去を巡って、市の条例に対して抗議を行っていたではないか。どんな取材に基づいて、こんな粗雑な記事が書けるのだろうか。

 

記事の最後で粟野氏は、「『一見(いちげん)さんお断り』かどうかなど、外国人にはわからない。お国柄を問わない『常識的なマナー』と異質な部分だけは、粘り強く教えてゆくしかない」と高説を垂れておられる。

 

これは何を言いたいのだろうか。一読して、まったく意味が解らなかった。こんな記事を書いて、恥ずかしくないのだろうか。それも駆け出しの記者ではない、大御所とも言える経歴と年齢のジャーナリストの方である。

 

いやまったく、とんでもない文章と出会ってしまった。この記事は素人の私から見ても、掲載した「ダイヤモンド・オンライン」誌の見識を疑うものだった。