高校生たちが「総合学習」で身に着けること | がいちのぶろぐ

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お手伝いをしてきた高校の「総合学習」は、校内発表会が終わって1週間が過ぎた。昨日は、入学試験のために授業がなかった。

 

 

 

月末には卒業式があり、3月に入れば学年末試験となって行く。だから、来週が今年度最終の授業となる。そこで今年度を振り返って、私なりの〝まとめ″を考えていた。

 

この授業は、担当教員から大きなテーマを与えられ、その中で自分たちがグループを作って自分たちなりのテーマ設定を行う。そのテーマを前提として先へ進んでゆく。

 

設定したテーマについて、自分たちが現状を調査する。時には誰かにヒアリングをしたり、現地視察などに出掛けたりすることもある。こうして、自分たちでテーマを膨らませる。

 

 

(あるお寺を訪問してヒアリング)

 

その上で、現状における問題点を拾い上げ、それはなぜ起こっているかを考える。そこから、テーマはそのままで良いかどうか検証をしながら、「ビジョン」を固める作業に入る。

 

当然ながら、ゴールとなる「ビジョン」には時間軸や空間的な広がりがあって、さらに上位に、究極の到達目標というべき「メタ・ビジョン」が存在するはずである。

 

(中間段階で発表して、質問や意見を貰う) 

 

その中で、「メタ・ビジョン」に到達するための比較的短期のいくつかの「ビジョン」が見えてくる。この中から、1年間に自分たちが取り組むべき「ビジョン」を探し出す。

 

こうすることによって、なぜこの短期的な「ビジョン」を掲げるに至ったかを、上手く説明できるようになる。こうして「ビジョン」と「ビジョン設定の理由」が一応でき上がる。

 

「一応」と言うのは、その後のディスカッションによって、こうして作ってみた「ビジョン」でも、まだ色々と変化することもあるから。

 

 

(何度も現地へ足を運んだグループもあった)

 

そこで現状の問題点を再度見つめ直して、さらに補うべき調査やデータ収集、インタビューなどを重ねて、問題点から「ビジョン」へ向かうために解決すべき「課題」を発見する。

 

ここまで来て、ようやく本当に考えるべき「課題解決方法」のディスカッションを行うことができる。この部分が、いわばこの授業における〝ハイライト″と言うことができる。

 

(校内発表会で貼りだされた、あるグループの成果)

 

この後は、ディスカッションを通して課題解決策を探って行くのだが、課題解決のためには、その解決策の「必要性」と「必然性」がなければならない。

 

これをマーケティング的に考えれば、「ニーズ」と「シーズ」が適合していなければならない。ニーズ(需要)があるのかという点と、シーズ(提供できること)があるのかということが〝レベル″的に見合う必要がある。

 

その上で、「解決策」自体も「仕組み=基盤整備」の方向と、「仕掛け=ストーリー作りや魅力作り」の両面を考慮しなければならない。

 

「仕組み」と「仕掛け」のどちらか一方で、課題が解決することもあれば、両方が揃わないと解決しないこともある。ただ、〝両方揃うべき″というケースの方が多いと思われる。

 

これだけの作業を通して、やっと全体像ができ上がって来る。この関係を図示したものを次に示した。

 

 

 

つまり高校生たちは、何もない状態からテーマを見つけ、その現状を把握し、課題を発見し、課題解決策を考えるという作業を、自分たちで一貫して行うことになる。

 

その間、担当教員と授業サポーター(私のような立場)は、教えることはしない。もちろんデータの収集方法や、資料の存在場所くらいは教えるし、考えるための議論の進め方はサポートする。

 

けれど、実際の中味を指導することは一切しない。自発的に、苦しみながらも最後まで〝自分たちなり″にゴールを目指してゆく。これは貴重な体験だと思う。

 

高校2年生という、頭が一番柔らかい時期に一つのことを自分たちで成し遂げることは、何ものにも代えがたい経験だ。

 

 

(先週の校内発表会の様子)

 

この先社会へ出ても、常にこうしたことを行わなければならない。だから、そのための基礎的な方法論を学ぶということである。

 

大学に行けば、最終的には卒業論文がこれに当たるだろう。社会へ出れば、毎日がある意味でこの作業の連続になる。

 

だから「創造性」と「協調性」という、この作業を通して身に着けることができる〝実質″は、生徒たちにとって一生の財産になると思っている。

 

さて私も来週の授業では、校内発表会で生徒たちが発表した中味について、簡単な講評を行うことになるだろう。辛口に話すか、甘くなるかはまだ考えてはいないけれど。