観光を プロデュースする 能力は | がいちのぶろぐ

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昨日のこのブログで、外国人観光客向けの取り組みとして、「花見の宴会」ということも、一つの「異文化体験」型ツアーとして成立するのではないかと書いた。

 

 

 

同時に、最近、外国人観光客向けに行われている「忍者体験」や「侍体験」といった、いわゆる「ごっこ遊び」感覚の異文化体験の話も書いた。

 

また、ある意味で「コスプレ」的な感覚で、「着物姿で町歩き」という観光スタイルが定番化していることも示した。

 

 

 

こうしたことを考えている中で、「観光プロデュース」というもののあり方も、併せて考えていた。その点に関して、今日は少し書いておきたいと思う。

 

図に示したように、外国人観光客が異文化体験を楽しみたいという場合、そこにはいくつかのレベルが存在すると思う。

 

 

まずは、上に書いたような「ごっこ遊び」感覚で行われる、イベント的な体験コースがある。

 

さらにもう少し本格的に、伝統文化や伝統芸能に関わるような体験を求めることもあるだろう。茶道や華道の体験、歌舞伎、能・狂言の鑑賞や、陶芸・工芸などの体験を、自分の趣味としてもっと知りたい、深めたいというケースである。

 

これがもっと進んでくると、誰かに弟子入りするなどして、修業を行うレベルになる人も出て来るかもしれない。禅僧になった外国人や、茶道を教えている外国人、落語家の外国人などもすでにおられるから。

 

このように、外国人が観光客として日本を訪れたところから始まる、「異文化体験」に対して、受け入れる側はどのような対応が考えられるのだろうか。

 

昨日のブログでも書いたけれど、最初はツアー企画として行われることから始まることが多いだろう。そこから先で、どんな展開が予想されるかということである。

 

外国人観光客にとって、「異文化体験」を期待することは、ごく当然のことであり、それを求めるからこそ、海外旅行に出掛けていると言っても良いだろう。

 

日本の古い寺社仏閣を巡る観光も、言ってしまえば、それが異文化のモノだから見る価値がある、ということだから。

 

 

 

また、「温泉にどっぷりとつかる」というコトも、シャワーを使う文化とは大きく異なっている。日本人は、世界にも例がないほど「お風呂好き」の人種である。それすらも「異文化体験」なのだ。

 

だから、観光において外国人客のニース(顕在化した要望)として考えただけでも、こうした「異文化体験」型のツアーはすでに成立していると言える。

 

さらにその先にある、まだ外国人自身も〝気づいていない要求=ウオンツ″として、新たな観光を企画するとすれば、それをプロデュースするために何が必要かということになる。

 

まずは、「観光資源」となり得る〝要素″を発掘することが求められる、それを見抜く〝眼力″を持った人材が必要になる。

 

その人材は、単に発掘するだけではなく、発掘した観光資源の〝原石″を「観光商品」に値するレベルまで「育成」しなければならない。

 

要は外国人観光客が、そのことにお金を払っても良い、と思ってくれるような「商品」にまで仕上げないといけない。そうでなければ、観光客として来てくれない。

 

同時に、その観光資源を「商品」としてどのように作り上げて行くか、ということのためには、資金計画と資金提供者も必要になる。それも探して来ないといけない。

 

もう一方で、〝ここにこんな観光商品がある″ということを知ってもらうためには、マーケティング戦略を立案し、情報発信を担当する人材を確保することも必要になる。

 

このようにして初めて、外国人観光客に対して「異文化体験」型観光を提供できることになる。

 

この「プロデュース機能」は、本来ならDMO(官民などが連携して地域観光を推進する組織【Destination Management Organizationの略称】)などの組織が担うべきものだと思う。

 

 

 

このDMOなどが、「ターゲットの想定(どんな顧客像=ペルソナを思い描くか)」や、観光資源の「場作り(いつ、どこで、何を、どれくらいの価格で、どのように実施するか)」を行わないといけない。

 

さらに、それを情報発信することによって初めて、外国人観光客にアピールすることができる。

 

つまり「プロデュース能力」の有無・高低によって、せっかくの観光資源を活かすこともできるし、腐らせてしまうこともあり得る、ということだ。

 

これは何も、外国人観光客向けの「観光商品開発」に限った話ではない。一般的に全ての商品開発においてもあてはまる話である。

 

そしてもう一つ、「競争・競合関係」という問題もある。上に示した図では、その地域のこととして考えているので、あえて競合関係の問題は図に示していない。

 

しかし現実の問題としては、観光資源だって常に「他の地域の、似たようなモノ・コト」や、まったく別種であっても、どちらを選ぼうかという「天秤に掛けられるモノ・コト」を意識することも必要になる。

 

これはマーケティング戦略を担当する人材とプロデュースする人材が、常に気に懸けておかなければならないことである。

 

まったく新しいモノ・コト、すなわち「オンリー・ワン」を発掘し、育成することは滅多にないことである。たいていは「似たようなモノ・コト」が存在したり、もっと楽しそうな体験型観光があったりする。

 

そんな中で「選ばれるための戦略=方法論」を考えることが、こうしたことに関わる人材にとって欠かすことができないポイントになる。

 

さて、ここまで書いてきて、既存のDMOなりといった組織が、どこまでプロデュース能力があるか、マーケティング戦略を構築できるかが、これからも問われることになるだろう。

 

外国人観光客が増える、ということと、その人たちを自分の地域へ呼び寄せるということは、「自動的に」つながることでは決してないのだから。