てやんでい 温暖化だよ べらぼうめ | がいちのぶろぐ

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今日配信のダイヤモンド・オンライン誌で、アメリカのトランプ政権の2018年度予算案では、「科学・環境」と関連する項目が、大幅に削減される見通しであることが報じられていた。

 

先端科学技術の研究予算が大幅にカットされることになれば、数万人にも上るとみられる研究者の先端科学技術に関する研究が、停止したり遅れたりすることが懸念されているということだ。

 

国家予算による後押しで進められてきた研究がストップすれば、アメリカの優位性の源泉となっていた先端科学技術、特に次世代のAI(人工知能)や様々なソフトウェア開発から生命科学に至るまで、大打撃を受けることになるかもしれない。

 

また、トランプ政権の環境保護庁(EPA)長官は、アメリカ議会でも地球温暖化否定論者の急先鋒だったブルイット氏が就任した。この人物は、オバマ政権時代には地球温暖化防止策に徹底的に楯突いてきた人物である。

 

その結果、来年度の環境保護庁の予算案は30%以上削減され、職員も2割以上が削減対象となっているということだ。日本なら、大臣自らが自分の所管する役所の予算を大幅に削り、人員を削減することなど考えられないことだから、その点では「見習ってほしい」面もあるが、今回のトランプ政権の考え方は、中味があまりにも大問題だと思う。

 

地球温暖化防止に関しては、一昨年末の気候変動枠組条約締約国会議(COP21)パリ会議で、これからの温暖化防止に取り組む枠組みとなる「パリ協定」がどうにかまとまり、昨年11月のCOP22で具体的に動き始めたところである。

 

 

 このパリ協定の締結時にも、オバマ政権は推進派であったし、中国を説得してCOP22までにアメリカと同時に批准させることにも成功した。その結果、批准にもたついていた日本を尻目に、COP22でパリ協定が発効することになった、という経緯がある。

 

そこへ今回の予算案である。トランプ氏は、温暖化対策を全面的に見直す大統領令にさっさと署名を済ませている。次はEPAの予算の大削減である。方向性は明らかである。アメリカはパリ協定を反故にすることを狙っているのだろう。

 

(温室効果ガスによる地球温暖化の模式図)

 

 その証拠に今日の記事でも、エネルギー省の予算案では、省エネや次世代エネルギー技術の開発支援の予算が打ち切られる、ということだった。さらに国務省の予算でも、気候変動関係を中心に予算が30%近く削減されるということだ。

 

 

 国務省の予算減額に伴い、オバマ政権が国際公約として掲げてきた、途上国の温暖化対策支援のための「緑の気候基金(Green Climate Fund)」の総額30億ドルに上る拠出金も、全面的に廃止されるということだ。

 

「緑の気候基金」は、パリ協定をまとめるにあたって、先進国の温室効果ガス削減案がまだまだ生ぬるいと批判してきた途上国グループを納得させ協定案に参加させるために、途上国の温暖化防止対策に対して金銭面での援助を約束した、国際的な取り決めである。

 

だからこの基金に対する拠出金を廃止するということは、アメリカはパリ協定の内容をを否定すると言っているのと変わらない、ということもできる。

 

こうしてみると、トランプ氏にとってはアメリカが儲かって、大幅な雇用増加ができればそれでいい、ということなのだろう。トランプ政権の政策の基本が国内向きだと言われているが、この温暖化防止の国際的取り組みへの予算削減という対応によく表れている。

 

自分を大統領に押し上げてくれた白人中間層の利益になること以外は、国際的にどのようなことが議論され、どのような方向に進もうとしているか、などということには全く興味がないのだろうと思う。

 

しかし、これからのアメリカの稼ぎ頭になると思われるAI(人工知能)関連のテクノロジーや、世界で激しい競争が繰り広げられている生命科学関連なども含めて、科学や環境問題に背を向けて、単に輸入から国内生産に切り替える、とだけ言っていれば、早晩アメリカ自身の競争力が失われてしまう。

 

そうなれば、今度は国際的な競争の中で強みがなくなり、輸出競争力が衰える。それが再び雇用機会の喪失につながって行くことになり、アメリカにとっては取り返しのつかないマイナス面ばかりが残ることになるだろう。

 

私のような市井の一庶民でも容易に想像ができることを、世界の英才が集まるアメリカのホワイトハウスが、どうしてこんな予算案を平然と組むのだろうか。いぶかしい限りである。

 

それ以上に、トランプ氏はロシアへの機密漏洩の疑いも持たれている。プーチン大統領と情報を共有するつもりだったとも報じられているが、大丈夫なのか。老獪な政治家であるプーチン大統領にしてみれば、トランプ氏は組みし易いというところなのだろうか。

 

先日のフランス大統領選挙でマクロン氏が勝利したことで、少なくともドイツのメルケル首相が一人で孤立してしまう状況は免れたが、地球温暖化防止や先端科学技術など、これからの人類にとって重要な課題が、世界的なポピュリズムの動きによって歪められてゆくことは、何だか情けないというか、世界が危険水域に入っているような気がしてしまう。

 

(フランス新大統領に中道派のマクロン氏)