川田は以前、ハローワークで勤める前に傲慢大学キャリアセンターで就職支援の業務経験があった。辞めたのではなく、「辞めさせられた」と言うのが実情である。


「川田くん、ちょっと」と言って賀谷間総務課長はストレスで出来た円形脱毛症を掻きながら退職勧告を突きつけた。契約期間満了ではなく、まだ日数が残されていたがボロ雑巾のように人を辞めさせるのが傲慢大学のやり方だ。


辞めざるを得ない状況や契約期間の途中でも相手に嫌がらせをして自ら辞めるよう誘導するのが手口である。


学長は朝礼でこう嘯くのであった。「私は経営者になってから40年間一度も人をリストラしたことはない。」「ただの一度もだ。」と偉そうな顔をして言うのである。


事務局員は神妙な顔つきで聞き入り厚顔無恥な老人の表情を窺うのであった。


川田はこのような体験、背景があるからこそ、寺田マリ子への支援に本気となるのであった。

川田と名乗る優しそうな女性はにこやかな笑顔で寺田マリ子を迎えてくれた。傲慢大学出身であることを伝えると憐れむような目でマリ子を見て今まで傲慢大学出身者がたくさんハローワークを訪れて来たことを教えてくれた。


川田は30代中盤のような雰囲気でマリ子にとっては少し年上の姉のように感じられた。


・自分に合った仕事が見つからないこと。

・どんな仕事が良いのかわからないこと。

・すぐに仕事を辞めたこと。

・母の病気。


自分の状況をマリ子はとにかく訴えた。川田は冷静にひとつ一つのことを整理しながら話しを聞いてくれた。


マリ子は自分の置かれている状況を他人に分かってもらえただけでも気持ちが軽くなった。

求人検索機とにらめっこしながら寺田マリ子はため息を吐いた。いい求人がない。というか何がいい求人かわからない。ピンとこない。


私に何ができるのかわからない。世の中が何を求めているのかわからない。不満ばかり募る。


ふと顔を見上げると相談コーナーと書いてある看板を見つけた。堅い表情の中年女性が何やら難しそうな顔をしてパソコンを眺めている。眉間の皺が何重にも重なり合い、マリ子の目には鬼の形相に見えた。


声をかけにくい・・・。そう思っていつものマリ子ならまっすぐに帰宅していただろう。しかし切迫した状況では甘い考えもしていられない。


「すみません。」と小声で言うと聞こえなかったのか前の女性は何も答えない。すいません、ともう一度言おうとした時に、後ろから声をかけられた。「どうしましたか?」優しそうな女性であった。