清太郎は、どうしても行きたい場所がありました。
それは…、
由紀子と暮らしたマンションでした。子供の事が気掛かりだったのです。
無事に産まれたのだろうか?
男の子だったのか、女の子だったのだろうか?
元気に育っているのだろうか?
清太郎にしてみれば、この世に自分の遺伝子を残す、たった1人の子供です。逢いたくて堪らなかったのです。
由紀子から会いに来ない様に釘を刺された言葉が、今も胸に突き刺さり、足を重くします。
それでも、一瞬でも良い、陰からでも良いから、姿を見たかったのです。
マンションの近くにある公園の側まで来ました。
ブランコに乗る3歳位の男の子が居ます。「ママ、こっち見て~!(^∇^)」
母親「うん、見てるよ~!^ ^」
その瞬間!清太郎は、
ハッ❗️!(◎_◎;)としました。
男の子の顔が自分にソックリだったのです。(この子だ!)
これが血の繋がりというものでしょうか?清太郎は本能的に分かったのです。
そして、母親の声には聞き覚えがありました。
後ろ向きに座っていましたが、間違いなく由紀子でした。
気が付くと、男の子も清太郎をじっと見ています。(この人、他の人とは何か違う…)
子供心にも何かを感じた様です。
その視線に気付き、由紀子が振り返りました。
由紀子「ハッ⁉️…」
清太郎を見るなり、驚きと戸惑いを露わにしました。
(何故、来たの⁉️💢)
言葉を交わす迄もなく、由紀子の視線は、清太郎を頑なに拒否しているのが分かりました。
子供が由紀子に近付き「ねぇ、このおじさん、誰?」
由紀子「…、知らない人よ」
由紀子の心には、清太郎の居場所は1ミリも残っていなかったのです。
その時、子供が公園の入り口に向かって走り出しました。
しかし、4.5m走ったところで、バタッと転けてしまいました。
清太郎は(あっ、危ない!)と駆け寄ろうとしましたが…、
次の瞬間❗️
子供「パパ~~o(^▽^)o、お帰りなさ~い❗️」
50歳位の男性が抱き上げ「ただいま~」と頬擦りしたのです。
時間が全てを変えていたのです。
そこには、新しい家庭が出来ていたのです。
清太郎は、無言で立ち去りました。
*・゜゚・*:.。..。.:*・*:.。.。.:*・゜゚・*
「ねぇ、このおじさん、誰?」
「知らない人よ」
「パパ~!」
何度も何度も清太郎の脳内で、こだまします。
清太郎が「知らない人」になり、あの男性が「パパ」になっていたのです。
でも、あの子の為にも、由紀子の為にも、その方が良いんだ。
俺は「知らない人」で良いんだ。
由紀子と暮らした温かい日々を、思い出していました。
それは、清太郎にとって初めて家庭を持ち、人間らしい生活をした日々だったのです。
サングラスで隠した目からは、涙が溢れていました。
失って初めて、その大切さを知ったのです。しかし、後の祭り、自業自得でした。
*・゜゚・*:.。..。.:**:..。.:*・゜゚・*
清太郎は値段の安い定食屋で夕飯を食べていました。
TVを観ているお客さん「この麻衣子って芸人、面白いねぇ」
店主「間の取り方とか、絶妙に上手いよねぇ、花月劇場はこの子のお陰でかなり儲かってるらしいよ」
清太郎も顔を上げてTVを観ました。
そこには…、あの麻衣子が七転八倒しながら、観客の笑いを取る姿が映っていたのです。
清太郎「麻衣子…、」
つづく。
