プルルルル…、プルルルル…、
携帯の画面を見るなり、清太郎は、不気味な笑いを浮かべました。
未登録の番号からの着信だったからです。
清太郎「麻衣子ちゃん⁈ 掛けてくれてありがとう!電話ずっと待ってたよ。
俺…、あれからずっと麻衣子ちゃんの事を考えてたんだ。
あの子なら売り出せる!アイドルになれる!ってね。
今度、良かったら事務所に遊びにおいでよ。そうしたら安心すると思うし」
ʕ•̫͡•ʕ•̫͡•ʔ•̫͡•ʔ•̫͡•
その事務所は、裏路地に入った雑居ビルの3階にありました。
かなり古い建物でエレベーターも無く「芸能事務所ストレートフラッシュ」と手書きされた郵便ポストも錆び付いていました。
何だか怪しい雰囲気を感じる麻衣子でしたが、事務所の扉を開けると…、
そこは別世界でした。
壁一面に所属タレントの顔写真と経歴が貼られていたのです。
誰もが知っている有名女優、モデル、タレントが所狭しと並んでいます。
麻衣子(えっ、この女優さんもここの所属だったの⁈ )
錚々たる顔ぶれに目を見張ります。
その日は、事務所の休業日だったのか、他には誰も居ない様子です。
麻衣子「あの~、私演技なんてゼンゼン出来ないし、セリフとか覚えられないし、台本とかにある漢字も殆ど読めなくて…、
そんな私がアイドルになれますか?」
清太郎「ははは…、実は台本の読み合わせをしていると、漢字が読めない子って結構いるんだよ。
マネージャーがルビを振ってくれるから心配要らないよ。
演技なんて下手に習わない方が良いんだ。逆に素人っぽさが売りになる時代だからね」
業界の事を何も知らない麻衣子は、清太郎の言葉を鵜呑みにしました。
清太郎「この後…、時間ある?
海辺をドライブしない?なんて誘っても…、良いかな?(//∇//)」
麻衣子は、心踊る気持ちを隠しながら頷きました。
*・゜゚・*:.。..。.:*:.。.:*・゜゚・*
それは麻衣子にとって、初めての「デート」と呼べるものだったのかも知れません。
白いレクサスの助手席から、端正な清太郎の横顔を盗み見する麻衣子。
風俗嬢の仮面の下には、まだ人を疑う事を知らない無垢な16歳の少女が居たのです。
2人は、浜辺を寄り添って歩きました。ただ、それだけで麻衣子の心は満たされていました。
サンダルを脱いで裸足になりハシャぐ麻衣子、その姿をカメラに収め様と何度もシャッターを切る清太郎。
2人の影は一つに重なり、夕陽に染まって行きました。
麻衣子は恋に落ちました。
これが清太郎の手口だとも知らずに…。
続く。
